インテリアデザイン 2022年のトレンド
新型コロナウイルスによるパンデミックは、我々の生活にまつわる全ての事柄に影響を及ぼした。生活空間のデザインにおいてもそれは例外ではない。ファッション誌「Vogue」のライター、エリス・テイラーが、「パンデミックが3年目に突入した今、デザイントレンドが引き続き精神安定を求めるものであることは至極当然のこと」と述べているように、デザイントレンドとパンデミックの関係性は、多くの評論家の間で共通の認識のようだ。我々に生活のあり方を再考させるきっかけとなったパンデミックを経て、今年のインテリアトレンドはどうなっていくのだろうか。
2022年のインテリアデザイントレンドを左右するもの
過去2年間に経験してきたコロナ禍により、人々はパーソナルな空間をより強く意識するようになった。パンデミック前から人気のあったオープンで開放的な設計は見直され始め、CountryLiving.comの編集者 レイチェル・エドワーズ曰く、「屋内に閉じ込められた期間が長かったため、今は屋外の雰囲気を屋内に持ち込むこと」を目指すトレンドに向かっている。 U.S. News & World Reportの不動産分野の編集者 デヴォン・トーズビーは、「人々のアウトドアへの欲求が屋内と屋外の垣根を曖昧にしている」と言う。更に「室内で植物を育て、屋内を無垢木やサンゴ、ジオード(晶洞石)などの自然の素材で飾ること」により、外と中の境界がより薄まると言う。
パンデミックの他に2022のトレンドを左右するものとして、スマートテクノロジーや省エネ、そしてサステナビリティがあげられる。
2022年のデザイナートレンド
それでは、「新しい」トレンドは生まれているだろうか。Bobvilla.comのライター、ケイティ・ノーランは、「ポピュラートレンドは移り変わりが激しく、そして繰り返されるものです。その時代ごとのエッセンスが加えられるものの、今日人気のあるものは、大抵が過去のファッションのリバイバルなのです。」と述べている。今日の「新しい」トレンドは、過去のトレンドからインスピレーションを受けて生み出されているのである。それでは、2022年のトレンドはどうだろうか?
流線形
今年は、角ばったアイテムよりも流れるような曲線を意識した形状が注目されるだろう。 IdealHome.co.ukのライター、ホリー・ウォルシュによると「人体の自然なカーブを称賛し、自然界に多く見られる球状や流体線が家具や照明、アートワーク、ラグなどに用いられるケースが増えている」。
書斎
なかなか終わらないパンデミックを前に、人々は、在宅勤務が予想よりも長引くことに気づき始めている。在宅勤務の慣習が定着するにつれ、自宅に常設の仕事部屋や勉強部屋を設ける発想が広まりつつある。
観葉植物の復活
アウトドアで過ごす時間が減ったことで、観葉植物の人気が再沸騰している。インテリアデザイナーの間で観葉植物への注目が高まっていることについて、ノーランは「観葉植物の異常な人気ぶりは、屋内をジャングルに変えてしまう例が特別ではない現状からも見て取れる」と述べている。
2022年のインテリアカラートレンド
どのインテリアトレンドにも、それを牽引する色がある。インテリア関連のサイトやインテリアデザイナー達が共通して推す今年のトレンド色は「緑」だ。 Ellie Décorのライター、サラ・クロスバートは、「自然ののどかさと心の平穏をもたらす、リッチなエメラルドの色味で家を埋め尽くしては?」とアドバイスする。HouseBeautiful.com.のライター、レイチェル・エドワーズは、Duluxのクリエイティブディレクターであるマリアンヌ・シリングフォードの「屋内での生活を長期間にわたって強いられた私たちは、パワーを与えてくれる自然の大切さに気付きました。家じゅうのドアや窓を開け放ち、自然の全ての色味を受け入れます。」という言葉に言及し、今年のトレンドカラーは緑であると強調する。このトレンドを裏付ける数字として、Pinterestにおけるグリーンのインテリアアイデアの検索数は昨年と比べて80%も上昇している。
2022年のインテリアデザイン(実践編)
今年のデザイントレンドを踏まえたうえで、今度はインテリアの具体的なデザインアイデアをいくつか紹介していく。各部屋の家具について、Bartone Interiorsのクリスティン・バートンは、「ほとんどのメーカーは、価格帯に関わらず多くの家具に軟らかいラインのアーチやカーブを採り入れている。よって、曲線のあるデザインが今年の家具のトレンドとなるだろう。」と述べている。
それでは、各部屋ごとに見ていこう。
キッチンをカラフルに
Elle Décorのライター、デイビッド・ナッシュは、「キッチンは、豊富な色/素材展開と技術の向上により、より大胆で明るくなり、カスタマイズの度合いも高まる。」としている。HouseBeatiful.comの記事で、レイチェル・エドワーズは、インテリアデザイン事務所 Splashbackのデザイン責任者、クレア・オブライエンの「ストーブやオーブン、壁、アクセサリーなどに多彩な色で味付けをする動きが出てきている」という言葉を用いて、2022年のキッチンを豊かにするのは色彩の革命だ、と述べている。ArchDailyのポーラ・モーラによると、キッチンは更にシステム化され、いろいろなものが内蔵されていく。ハンドルのない引き出しが主流になり、シアーでシームレスなミニマルスペースが求められていく。
リビングルーム
HomeandGardens.comのジェニファー・エバートは、リビングの家具においては、一過性のはやりではなく「時を超えてエレガントな空間を提供できる」ことにフォーカスすべきだと言う。
アウトドアへの欲求からくる外と中の境界線を曖昧にする動きは、今年更に加速する。Spruice.comでは、ALineStudioのアマンダ・トンプソンの「DIY愛好家とデザイナーの両方が、植物と自然光、そして自然の換気によって自然と繋がれる、平穏な環境づくりに意欲を燃やすだろう」という言葉を引用して、このトレンドを強調している。
視覚的に自然と繋がる空間づくりの人気は、サステナビリティを意識した家具などからも感じられる。古びた家具が世界中のリビングで再び居場所を見出しており、このようなアップサイクルされた家具への注目は、トレンドの兆しであると言える。
寝室
1日の3分の1ほどを過ごす寝室に置く家具は、インテリアデザイナーからも重要視されるアイテムだ。身体が不調なときでもゆっくりくつろげる空間であることが求められる寝室では、以下のトレンドが予想されている。
デザインアイデアやニュースを掲載するLivingetc.comによると、
- 大胆なストライプ
- 座れるエリアを設けることで多目的スペースを作る
- 個性的なヘッドボード
- ボックスルーム(収納部屋のような小さなベッドルーム)
- 自然色の方式
が今年の寝室のデザイントレンドのキーワードだ。
今年消えていくトレンドは?
新しいトレンドが誕生する一方で、そのステージを終えるスタイルもある。Realhomes.comがリストアップした、2022に避けた方がよいスタイルとは、
- 古びた風合いのクラシックなファームハウス家具は、不完全な美を求め、熟練の職人技でデザインに向き合ったモダンなアーチザン風の家具に取って代わられる。
- リラックスできる肌触りのアイテムの台頭により、ベルベット人気は風化してきているが、小さなベルベットのアイテムを少しだけ採り入れるのはまだ有効である。
- 全ての部屋において、無難なナチュラル色ではなく、大胆な色味が採用される。
- 生きた植物の人気が高まっているため、ドライフラワーの需要は減る。
- 在宅時間が増えたため、開放的な住空間よりも、プライバシーを意識した空間設計が求められる。
インテリアデザイナー達が提示するトレンドを述べてきたが、最終的には自分のスタイルや好みを反映させ、自分の住空間に合ったデザインであることが最も大切である。
(Hoolnnの依頼による転載・翻訳)