ポーラ美術館に新たな美術館のロビー空間としての在り方を提案する来館者誘導装置「Spectra-Pass」が設置

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ベルトパーテーションに沿って、周囲の人との間に一定の間隔を保ちながらチケットカウンターに整然と人が並んでいる光景は今や当たり前の光景になったが、美術鑑賞を目前に控えた来館者にとってそれがふさわしい体験なのか、そんな疑問から生まれたSpectra-Passは新たな美術館のロビー空間としての在り方を提案する。

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Spectra-Pass導入後のチケットカウンター周辺の光景(C) Ken KATO

ポーラ美術館のロビー空間をグリッド状に分割し、それを辿るようにひと筋の線を描いていくと、抽象的な形の空間が立ち現れてくる。外側から一見複雑で捉えにくいこの場所に身を置くと道が開け、自らの感覚を頼りに歩みを続けることができる。エスカレーターの降り口からチケットカウンターまでのほんのわずかな距離の間に、美術鑑賞を目前に控えた来館者の感性をそっと刺激する。Spectra-Passは刻々と変化するロビーの空間を体験しながら自らの感覚に引き込まれていくきっかけを作り出すことで、まだ見ぬ作品との出会いに期待感・高揚感を高めていく。

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Spectra-Pass検討時のイメージパース (c)ALTEMY

Spectra-Passは、建築の概念を拡張する建築設計集団「ALTEMY」として、建築家 津川恵理とデジタルデザイナー 戸村陽のコラボレーションにより設計され、製作監理は太陽工業、小泉製作所製作により施工された。

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津川恵理

津川恵理(つがわ・えり)プロフィール

2015早稲田大学創造理工学術院古谷誠章研究室修了。2018-19年文化庁新進芸術家海外研修員としてDiller Scofidio+Renfro(NY)に勤務。建築設計業務に加え、ニューヨークのハイラインを舞台にした都市演劇「Mile Long Opera」の演出、ヴェネツィアビエンナーレ国際展の展示制作などに従事。2019年神戸市による「さんきたアモーレ広場」デザインコンペでの最優秀賞受賞。帰国後、建築設計集団「ALTEMY」を設立。2020年東京藝術大学教育研究助手着任。建築設計の思想を活かして領域やスケールを横断しながら、人の感性に働きかけ環境を再認知できるような作品を社会に提示していくことを志している。

ポーラ美術館にて開催中の展覧会

    • フジタ―色彩への旅」会期:2021年4月17日(土)から9月5日(日)まで 
      世界的な画家になることを夢みて、1913年、26歳で単身渡仏したレオナール・フジタ(藤田嗣治、1886-1968)は、旅先で目にした風景や人物、異国の歴史や風俗などに創作のインスピレーションを求めた。本展ではフジタの旅とそれにともなう色彩の変遷に焦点をあて、フジタの生涯の旅路と画業の展開があらためて紹介される。
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マドレーヌ・ルクー《フジタの肖像》1931年 メゾン=アトリエ・フジタ

    • モネ―光のなかに」会期:2021年4月17日(土)から2022年3月30日(水)まで
      季節や時間によって異なる表情を見せる、移ろいゆく光を生涯追い続けたモネ。本展示では《ルーアン大聖堂》(1892年)や《睡蓮の池》(1899年)など国内最多19点のモネ作品を収蔵するポーラ美術館から名品の数々が、気鋭の建築家 中山英之による斬新な展示空間のなかに展示される。
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クロード・モネ 《ルーアン大聖堂》1892年 ポーラ美術館

    • 岡田杏里「Soñar dentro de la tierra / 土の中で夢をみる」会期:2021年4月17日(土)から9月5日(日)まで
      芸術表現と美術館の可能性を「ひらく」という趣旨の展示「HIRAKUPROJECT」の第11回目として、日本とメキシコを拠点に活動展開し、現実と幻想、現代性と土着性など相反する要素を鮮やかな色彩で表現するアーティスト、岡田杏里を紹介。
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《Soñar dentro de la tierra》2021年、アクリル/カンヴァス、45cm x 106.7cm、作家蔵 (c)Anri Okada

ポーラ美術館概要

開館時間午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館⽇無休 ※展示替えのため2021年9月6日(月)から10日(金)休館
所在地神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚⼭ 1285
TEL0460-84-2111
入館料大人¥1,800/シニア割引(65歳以上)¥1,600/大学・高校生¥1,300
中学生以下無料/障害者手帳をお持ちのご本人及び付添者(1名まで)¥1,000