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ADFミラノサローネデザインアワード2021 受賞作品発表

DFミラノサローネデザインアワード2021の審査結果が発表され、最優秀賞と優秀賞の3作品が決まりました。最優秀賞にはTakuto Ohta氏の「~」、優秀賞にはBoey Wang氏の「re-STANDARISE」とAlexander Schul氏の「Substantial Furniture Line」が選ばれました。受賞された皆様、おめでとうございます。また、当アワードに応募された方々と運営をサポートしていただいたすべての方々に感謝申し上げます。

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「~」/ Takuto Ohta

最優秀賞

「~」/ Takuto Ohta

テーマ「当たり前の再考」

我々は、日常生活における物体との関係性はすでに出来上がったものとしてとらえている。我々の身の回りの物体について、その機能とデザインの合理性について理解したつもりでいるのではないか。その物体に対する既成概念を改めて見つめ直すことで、暮らし方に変化をもたらすことができるのではないか。

たとえば、物を入れる容器として機能するはずの物体。物を入れていくことでその形を変化させ、物でいっぱいになったときには「容器」としての機能を果たさない。逆に、物を減らしていったとき、元の形が再び出現する。物が物との関係性でその形を変えるように、我々も変化する物との関係性を既成概念で認識している。adf-web-magazine-milano-salone-award-2021-decofin-2

我々は、常識と経験により造られた固定観念を元に言葉や物体を消化するため、そこに思考力が働くことはない。不確実性と熟慮を嫌う、象徴主義的な世の中である。

「~」は、空間に溶け込み、そこに変化をもたらすオブジェクト。空気の動きや響きに呼応し、他の物体との関係性でその形状を変化させる。目に見えない「~」が、触れる物体の質感をあらわにすることで、無意識の記憶が刺激される。「見る」ことから「理解する」ことに移行し、形状の根本的な機能や言葉の本当の意味を再考するきっかけとなる。目の前の非現実的な現象が、固定観念を拒絶し、我々の意識に深く入り込んでくる。そこに、人と物との新たな関係性が生まれる。

大量の情報の波にもまれながら、我々はその不確実性を受け入れながら様々な情報を収集していく。「~」の挑戦は、取り巻く世界に多様な情報を提供し続け、新たな概念を作っていくことである。adf-web-magazine-milano-salone-award-2021-decofin-4

たとえば、ひとつの動作を理解するときに、我々はそれを包括的に、特定の視点から解釈する。「彼はテーブルにグラスを置いた」という行動を見聞きした場合、「彼」「テーブル」「グラス」「置く」という符号に切り取って認識するだろう。しかし、それに付随する他の情報が実は存在する。「~」は、ときには背景に溶け込み存在しない。しかし物や人が関わることで、その役割は多様に変化する。

「~」の普遍的な性質を可能にするのが、その素材と構造である。コイル状の鋼鉄線を用いた多面体(切頂二十面体)で糊を使わずに構成されており、荷重に耐えうる構造となっている。随所に張られた薄い膜により、空気や光の影響を受けてまるで生きているかのような繊細な動きが生まれる。

作品の紹介動画
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普段あまり考えることの無い根本的な問題定義からのアプローチを試み、それがロジカルに完結している事を評価しました。デザイン作品としての完成度や機能性、おもしろいマテリアルの使い方も課題に沿っていて上手く作品に生かしていると感じました。

審査員:KOTA BANDO

TAKUTO OHTAプロフィール

1993 フランス生まれ
2017 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業
2019 同学科インテリア研究室 教務補助員
2019 東京藝術大学デザイン学科修士過程 入学
2020 インテリア研究室助手 着任

現在、デザインユニットDECOとして活動。

<受賞歴>
2014 ASIA AWARD_SELECTED
2015 MILANO SALONE_ZONE TORTONA
2015 ASIA AWARD_SEMI GRANDPRIX 2016 ICFF_IN NYC
2017 MILANO SALONE_IKEA_BOOTH
2018 PLASTIC_DESIGN&STORY AWARD_SELECTED
2019 WOOD FURNITURE COMPETITION_SILVER AWARD 2019 COMIT COLBERT AWARD_GRANDPRIX
2019 PANASONIC SPORTS CHANGE MAKERS_SLECTED

優秀賞

re-STANDARISE / Boey Wangadf-web-magazine-milano-salone-2021-re-standardise-1

テーマ「測定不能な距離」

人類は、取り巻く環境を認識し理解するため、測定器を利用してきた。それが物事を標準化し、効率化するためにとても有効であったからだ。ただ、一方で、それは厳格な規律を生み、想像力や感情が入り込む隙を与えない。

当プロジェクトは、伸縮性のある定規、筆で描くコンパス、3D三角定規、伸縮性のある気泡水準器などで、物理の概念にとらわれない測定法を提案することで、空間の常識を超えた解釈を可能にする。

パンデミックによりソーシャルディスタンシングが当たり前となった今、物理的な距離感だけでなく、個々の内に生まれた不安を測る、主観的な測定とはなんなのか。それを考えるべく、社会の流動性を取り入れ、柔軟な本能を刺激するプロジェクトとなることを目的とした。

作品の紹介動画

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当作品は、オブジェクトとの関係性とオブジェクトの存在意義について考えさせられる最も印象的な作品でした。日常的に利用するアイテムを、とても詩的でユーモアのある方法でシンプルに表現していたのも評価のポイントでした。

審査員:Eric Clough

Substantial Furniture Line / Alexander Schuladf-web-magazine-milano-salone-2021-sustainable-furniture-line-2

資源のリユースにより環境を守る姿勢が、デザインにももっと取り込まれるべき、との考えから、プラスチック素材に興味を持った。プラスチックは、その加工のしやすさと耐久性から、我々の生活をより便利にし、今や欠かせない素材となっている。

そこで、耐久性があり、見た目にも美しく、リサイクルの利点を生かした、工業生産が可能な作品を考案。リサイクル製品をより多く生産できる、という点で工業製品となりうることは非常に重要な要素だった。

プレスシート方式で加工されたSmileplasticsのプラスチック素材を利用。ヨーグルトの蓋などの残留物が、興味深いパターンとなって表れ、デザイン性の向上に一役買っている。独自の熱形成法を採用し、製品の軽量化、耐久性向上、材料の節減を視野に入れつつデザインを完成。

完成させた椅子は、1㎡ほどの厚さ6mmのシートで作製。組み立て式で耐荷重は160kg。同じモールで作製されたサイドテーブルは、生産工程の汎用性を証明している。ランプのデザインは、シンプルかつ機能的で、リサイクル素材のデザイン性を活かしたものとなっている。

接合に利用したステンレスのねじ以外はすべて同じマテリアルを利用している。シンプルでどんなインテリアにもなじみやすいデザイン。シンプルな造りは、製造工程の簡素化に繋がっている。リサイクルシートのパターンを変えるだけで、全く違った雰囲気の作品が仕上がる。

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アレクサンダーシュルのエントリーは、コンセプト、グラフィックス、そして製品の品質の面で最も効果的に提示された作品でした。素材の再構築というより、再生プラスチックを利用した点が高く評価されました。

ー審査員:Eric Clough

審査員

Eric Clough (エリック・クラウ)氏:NYを拠点にアメリカやヨーロッパ、アジアなどで活躍する212box代表 。

坂東航太(ばんどうこうた)氏:Monolayer, Bando Designの創設、経営を経て現在NYを拠点とするインテリアデザイン設計事務所Bando x Seidel Meerssemanの代表。