「ブラック・アート」とは何か?「ブラック・アーティスト」とは誰か?

美術出版社は、『美術手帖』4月号「ブラック・アート」特集を2023年3月7日(火)に発売する。近年躍進が目覚ましい「ブラック・アート」について、現在活躍するプレイヤーたちの言葉に耳を傾け、その言葉に潜む歴史を知ること、日本で「ブラック・アート」を語る意味を探る。

adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-1

『美術手帖』4月号

特集「ブラック・アート」「ブラック・アート」とは何か?

近年「ブラック・アート」の躍動が目覚ましい。2022年の第59回ヴェネチア・ビエンナーレで、アフロ・カリブ系イギリス人であるソニア・ボイスの手がけたイギリス館の展示が金獅子賞(国別)を受賞し、同年のターナー賞は17年のルベイナ・ヒミド以来、黒人女性として史上2人目のヴェロニカ・ライアンが受賞している。また「ブラック・アーティスト」や「マイノリティ」と呼ばれる作家たちの活動や意義の見直しを図る展覧会が各国で開催され、『アートレビュー』誌が選出する美術界でもっとも影響力のある100組 のランキング「Power 100」では、アフリカの現地を拠点に活動する作家やキュレーターの名前も数多く見られる。adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-3

しかし、「ブラック・アート」と名付けるものとはいったい何を指すのか?なぜ地域や世代ではなく「色」で、その作品や人物をカテゴライズしているのか?本特集では文化研究者の山本浩貴を総合監修に迎えて、「ブラック・アート」という言葉と概念をとらえ直す。(共同監修=中村融子[アフリカ現代美術研究])。

adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-2欧米を中心としたアートサーキットで活躍するブリティッシュ・ブラックやアフロ・アメリカンの作家やキュレーターにくわえて、アフリカやカリブ海地域で生まれ、現地を拠点に活動するアートのプレイヤーを取り上げ、同時に「ブラック・アート」を語るうえで欠かすことのできない、その「歴史」や「研究」にも目を向ける。現在美術界で活躍する「ブラック」のプレイヤーたちの言葉に耳を傾け、その言葉に潜む歴史を知ること、日本で「ブラック・アート」を語る意味を考える。adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-4

PART1:ブラック・アートの現在地

数多くの「ブラック・アーティスト」が活躍する現在、その名称のもとにカテゴライズされる作家や作品にも、複雑な歴史の階層や多彩な地域の特色などの「多様性」が見て取れる。このパートでは様々な地域で活動する「ブラック」の作家やキュレーター、そしてギャラリストを取り上げる。彼ら・彼女らの作品や活動が、現在の世界やその歴史認識に向けて問いかけているものとはなにか?インタビューやキーパーソン解説、そしてその研究の現在などから、美術界での「ブラック・アート」の現在地を探る。adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-7

PART2:ブラック・アートの歴史

現在の「ブラック・アート」を語るうえで欠かすことのできない、植民地主義や美術界での「闘争」の歴史。このパートでは、その一端を知るために「奴隷制と植民地主義」「欧米での展覧会」「アーティスト」「言説と批評」「美術と政治」の5つのトピックから、歴史上に起きた出来事や事象に触れる。また、「ブラック・アート」の「名付け」の歴史やそれが及ぼした論争や影響についても、2つの論考で解説。その呼称がはらむ、排除と周縁化のメカニズムについて考える。

adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-5また、福岡県立美術館で40年にわたる作家活動を「回顧」する個展を行った牛島智子のロングインタビュー、マイケル・ハイザーの《シティ》の公開等で再び注目を集める「ランド・アート」を先住民のアーティストの作品から読み替える原田真千子の論考を掲載。adf-web-magazine-bijutu-tecyo-april-6

目次

特集:ブラック・アート
  • 山本浩貴=総合監修 中村融子=共同監修
  • 「ブラック・アート」とは何か? 「ブラック・アーティスト」とは誰か?
    山本浩貴=文
PART1:ブラック・アートの現在地
  • ソニア・ボイス
    山本浩貴=聞き手・文
  • シアスター・ゲイツ
    菊池裕子=聞き手 山本浩貴=構成
  • コヨ・クオ
    中村融子=聞き手・文
  • イブラヒム・マハマ
    中村融子=聞き手・文
  • メグ・オンリ
    金井美樹=聞き手・文
  • 未来と過去が織り成す交点──ブリティッシュ・ブラック・アートの現在地
    山本浩貴=文
  • 2010年代以降のアメリカにおけるブラック・アートの新たな地平
    國上直子=文
  • 美術と主権を「複数化」すること──アフリカ現代美術のエコシステムの涵養
    中村融子=文
  • カリブ海・環大西洋ブラック・アート論序説
    中村隆之=文
  • [対談]「ブラック・アート」研究のこれまでとこれから──日本における可能性と課題
    萩原弘子 × 小笠原博毅
    山本浩貴=進行 永峰美佳=構成
  • 「ブラック・アート」をめぐるキーパーソンたち
    エル・アナツイ / サミー・バロジ / インカ・ショニバレCBE / ルベイナ・ヒミド / ローナ・シンプソン / マリアンヌ・イブラヒム / アレクシス・ペスキン / ボナベントゥアー・ソー・ベジェン・ンディクン
  • 吉國元
    永峰美佳=取材・文
  • マーロン・グリフィス
    菊池裕子=聞き手
PART2:ブラック・アートの歴史
  • 奴隷制と植民地主義 / 欧米での展覧会 / ヴィフレド・ラム / ジャン=ミシェル・バスキア / 言説と批評 / 美術と政治
  • 「ブラック・アート」をより深く考えるためのブックガイド
  • [翻訳論考]ブラック・アート──代表するという重荷
    コビナ・マーサー=文
  • [論考]「ニグロ・アート」とブラック・アート:誰が文化を規定するのか
    柳沢史明=文
  • ARTIST IN FOCUS
    石垣克子
    白坂由里=取材・文
  • 百瀬文
    中島水緒=取材・文
  • WORLD REPORT
    New York / Dublin, Nottingham, London / Scotland / Berlin / Tainan / Kuala Lumpur
  • ARTIST INTERVIEW
    牛島智子
    竹口浩司=聞き手
  • REVIEWS
    「日本の中のマネ 出会い、120年のイメージ」展
    椹木野衣=文
  • 金氏徹平個展「POOOPOPOO」
    清水穣=文
  • PAPERS
    ランドアートのレガシーとその向こう
    原田真千子=文

美術手帖2023年4月号

発売2023年3月7日(火)
定価1800円+税

pwa