アートにおける経済産業的な価値
一般的に、アートは文化庁の管轄と思われがちだ。だが近年、アートは文化的な価値のみならず企業の成長や地域の活性化などの経済産業的な価値も確認されていることから、経済産業省でも総勢35名の有識者からなる研究会「アートと経済社会について考える研究会」を史上初めて設置し、議論を積み重ねてきた。本研究会は現在世界シェア1~4%程度ともいわれる日本のアートシーンを活性化させることが主な目的という。
その議論の積み重ねをまとめた報告書が発表された。
各有識者のコメントの一部抜粋
大林剛郎
(研究会座長)(株式会社大林組代表取締役会長)
これからの時代には「やりたいことをやる」、「人と違うことをやりたい」ということも大事であり、このような要素がアートや人文知にあるのではないかと考えています。
企業においては、不確実性が高まる中でステークホルダーを束ねる求心力、グローバル化の中での差別化、AIに代替されない創造性あふれるイノベーション人材の育成等が求められる中で、アートが貢献できる余地があると考えられます。
日比野克彦(東京藝術大学学長)
(アートの持つ力とは)一人一人違っているということを受け入れることができる力だと思います。
「多様性を持つ社会をどうやってつくるのか?」「ダイバーシティとは何なのか?」「誰一人取り残さないためにはどうすればいいのか?」そういう問いが立ちはだかった時に、多様な個性を否定せず受け入れる力、アートの特性である分からないものを引き受ける力が必要です。
武田 菜種
(Plugin+代表/Art Basel VIP レプレゼンタティブ日本/アートウィーク東京VIPリレーションズ)
現代アートは人や社会に新しい考え方や視点、自由な発想を提供し、受け手側に考察する機会をもたらし対話を生みます。
齋藤 精一
(パノラマティクス主宰)
よそ者としてのアーティストの活動は、作品としてのアウトプットだけではなく、作品制作の過程に起こる様々な摩擦や文脈を作り出し、鑑賞者と作品、土地と鑑賞者、地域と鑑賞者、地域同士の会話等、結果として様々な会話を創発することができます。
報告書概要
- アートと企業・産業
アーティストの思考を学び創造性を高める取組や、創作や鑑賞等を通じた人材育成、組織活性化の取組などを踏まえ、企業・産業からアートへの継続的な需要創出のための課題等についてのまとめ - アートと地域・公共
地域活性化や観光需要獲得などの効果と、地域におけるアート導入に向けた工夫や留意点、活用可能な制度等についてのまとめ - アートと流通・消費
より多くの人がアートに親しむために必要な取組や、近年登場している新たなアート・スタートアップの革新的なサービスなどを踏まえ、アーティストの活躍機会やマーケットを拡大していくための環境整備についてのまとめ - アートとテクノロジー
アートの可能性を広げるテクノロジーの重要性や、テクノロジーの社会実装・イノベーションを促進するためのアートの重要性についてのまとめ