「機械時代」(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代
ポーラ美術館は、「モダン・タイムス・イン・パリ 1925-機械時代のアートとデザイン」展を2023年12月16日(土)から2024年5月19日(日)まで開催する。1920年代、フランスの首都パリをはじめとした欧米の都市では、第一次世界大戦からの復興によって工業化が進み、「機械時代」(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代を迎えた。本展覧会は、1920ー1930年代のパリを中心に、ヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介する。
特にパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催された1925年は、変容する価値観の分水嶺となり、工業生産品と調和する幾何学的な「アール・デコ」様式の流行が絶頂を迎える。日本では1923年(大正12)に起きた関東大震災以降、東京を中心に急速に「モダン」な都市へと再構築が進むなど、世界は戦間期における繁栄と閉塞を経験し、機械や合理性をめぐる人々の価値観が変化していった。コンピューターやインターネットが高度に発達し、AI(人工知能)が人々の生活を大きく変えようとする現代において、本展覧会は約100年前の機械と人間との様々な関係性を問いかける。
展覧会構成
機械と人間:近代性のユートピア
1918年に第一次世界大戦が終結すると、機械文明は生活の利便性を高めるために大きく発展。特に自動車や航空機が普及し、機械時代と呼ばれる時代の象徴となった。芸術家やデザイナーも機械の進化が理想的な新しい時代をもたらすと信じ、機械をモティーフにして作品を制作している。
装う機械:アール・デコと博覧会の夢
1925年にパリ現代産業装飾芸術国際博覧会が開催され、この時代の流行が一堂に会した。ガラス工芸作家ルネ・ラリックは、自動車を飾るカーマスコットや、幾何学的な建築空間に合わせた室内装飾、香水瓶などのデザインを手掛け、カッサンドルは、単純化した造形と大胆なグラデーションを活かして豪華客船や鉄道のポスターを制作している。
役に立たない機械:ダダとシュルレアリスム
1910年代には、欧米の各都市で芸術のシステムに異を唱える芸術運動「ダダ」が起こり、1924年にはアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表。彼は理性ではたどり着けない「超現実」を芸術によって探究するシュルレアリスムを創始し、それは1920年代後半から大きな芸術運動となっていった。
モダン都市東京:アール・デコと機械美の受容と展開
日本では1923年(大正12)に発生した関東大震災からの復興により、急速に近代化が推し進められた。日本のモダンデザインのパイオニアである杉浦非水は、1922年(大正11)からのヨーロッパ遊学を経てアール・デコ様式を昇華させ、明快で力強いデザインによってビルや地下鉄が彩るモダン都市・東京を表現した。
21世紀のモダン・タイムス
本展覧会では、現代において機械文明やロボット、デジタル時代の視覚性をテーマに制作を行うアーティストを紹介し、現代の「モダン・タイムス」を考える。パリ在住の作家ムニール・ファトゥミによる、自身のルーツであるアラブ世界の近代化をテーマとした映像作品、「ポスト・ヒューマン」の世界を思わせるロボットのような人物像を制作する空山基による近未来的な立体作品、そしてインターネットを使ったNFT作品を手掛けるラファエル・ローゼンタールによるデジタルとフィジカルとの境界線を問う高さ3メートルにおよぶレンチキュラー作品を展示する。
「モダン・タイムス・イン・パリ 1925―機械時代のアートとデザイン」開催概要
会期 | 2023年12月16日(土)から2024年5月19日(日)まで |
会場 | ポーラ美術館 |
URL | https://bit.ly/3PtJ1F4 |