新素材研究所が白井屋ホテルに特別個室を完成
前橋市の話題のアートデスティネーション「白井屋ホテル」を運営する白井屋ホテルが、現代美術作家、杉本博司と建築家の榊田倫之による新素材研究所に設計を委託した「真茶亭」が完成。素材や職人技にこだわりぬいた「真茶亭」は、特別個室としてプライベートの会食や催事などに最適な空間となっている。
室内の扁額にも揮毫されている名称の「真茶亭」は、本施設の奥に佇む茶室の壁の緑色、ホテルの周囲に溢れる自然の緑色に調和しながら、真の抹茶色を体現した土壁の色に由来する。扁額は、杉本博司によって揮毫されたものだ。
柔らかく光を透過する積層ガラスのファサードによって、内部空間は昼間と夜間で違う表情を見せる。この割肌が特徴的な積層ガラスは、厚さ19mm のフロートガラスを硝子職人の手で一枚一枚小口を割って表情をつけている。さらに、割肌の表情を読みながら、100枚以上のガラスを手作業で丁寧に重ね、壁として仕上げている。室内中央を占める無垢の杉材を使用したカウンターは、そのうつくしい杢目を、ボトルクーラーとして据えた石製立ち手水からこぼれる水の波紋の広がりと、波打っていく様に見立てている。澄んだ水の流れを喚起する杢目を選び、手水から自然に連なるよう工夫。正面に扁額を飾る土壁は、見切り材の枠を極力細くし、壁の色と馴染むよう神代杉を用いた刃掛け納まりとしている。真の抹茶色とは何かを体現し、繊細な配合で顔料を混ぜ合わせた左官仕上げが施されている。
新素材研究所/杉本博司+榊田倫之
新素材研究所は、現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が2008年に設立した建築設計事務所。その名称に反して、古代や中世、近世に用いられた素材や技法を研究し、それらの現代における再解釈と再興を活動の中核に据えている。すべてが規格化され表層的になってしまった現代の建築資材に異を唱え、敢えて扱いが難しい伝統的素材の建築的な可能性を追求する。それは近代化のなかで忘れられつつある高度な職人の技術を伝承し、さらにその技術に磨きをかけることでもある。時代の潮流を避けながら旧素材を扱った建築を造ることこそが、今もっとも新しい試みであると確信し、設計に取り組んでいる。
「真茶亭」概要
所在地 | 群馬県前橋市本町2-2-15 白井屋ホテル内(グリーンタワー 1階) |
竣工 | 2020年12月 |
延床面積 | 25.9 m² |
設計 | 新素材研究所: 杉本博司 榊田倫之 山村和巳 |
用途 | 特別個室 完全予約制 |