ギャラリーの白い壁を剥がして作品制作

KOTARO NUKAGA(天王洲)は2023年4月8日(土)から6月3日(土)まで、ハワイ島生まれのアーティスト マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホーによる個展、「SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN」を開催する。

adf-web-magazine-something-so-beautiful-is-so-easily-forgiven-1本展は、ホワイトキューブと言われるギャラリーの白い壁の一部が剥がされて作品化され、ギャラリーの壁に直接描いた「フレーズ」をドライボードごと剥がしたペインティングと、壁面内部に直接「フレーズ」を描いたペインティングの組み合わせによって構成されている。壁面内部のペインティングは、展覧会終了後、壁の修復とともに半永久的に壁面内に残り続ける。adf-web-magazine-something-so-beautiful-is-so-easily-forgiven-7

展覧会詳細

本展はホワイトキューブと言われるギャラリーの壁に直接介入するカタチで作品が制作されている。「フレーズ」をギャラリーの壁に直接描き、引き剥がすというアーティストの行為は1929年にニューヨーク近代美術館(MoMA)が公共性に支えられた近代美術館制度を目指し導入した、ホワイトキューブという制度からも逃走するZ世代のアーティストの態度でもある。それは言語を扱う表現の一部、つまり言語による非領域化の姿勢として見ることもできる。ホーが様々なメディアから抽出したテキストによって作り出した「フレーズ」はインターネットやソーシャルメディアなどに溢れるダークで不条理なユーモアを含むミームカルチャーの影響を受け、インターネットやソーシャルメディアを使いこなすZ世代はインターネット上に広がる様々なミームを共有することで、共感を生み、異なる世代から押し付けられる別の価値観に対する不満や未来への失望、幻滅といったものを皮肉やダークなユーモアによって自らの価値観や感性として表現している。ミームはその言語が指し示す直接的な意味だけではない非言語的な領域がSNSなどを通じて伝えられている。ひとつの「フレーズ」にはいくつかのデザインのフォントが使われ、言語でありながら絵画であり、テクスチャーをもっている。あえて混在したアメリカ英語とイギリス英語など文法的・言語的な不自然さがあり、言語を非領域化させることで意味の先へと向かわせる。ホーは、上の世代の人々によって領域化された世界の構造を自分たちの世代の言語によって非領域化し、創造の可能性を広げる。adf-web-magazine-something-so-beautiful-is-so-easily-forgiven-8

マイケル・ホー

1996年、ハワイ生まれ。東京を拠点に活動する広東・日系アメリカ人のアーティスト。2018年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で美術学士号を取得した後、平面から立体、そしてその中間に位置するような作品を制作し、鑑賞者と作品のあいだに起こるその場限りの対話を促す。バーバラ・クルーガーやアンドレア・フレイザーといったアーティストに師事したホーの作品は、象徴的なイメージと太字のテキストを主に組み合わせる。そうしたイメージやテキストは、単体であれば挑発的だったり、直接的だったりするものの、組み合わされることで意味が多重になり複雑化する。これらの作品は、不透明な社会批判をもたらし、鑑賞する者を解釈する側に位置づけようとする不条理でユーモアをもった尺度を生む。

「SOMETHING SO BEAUTIFUL IS SO EASILY FORGIVEN」開催概要

会期2023年4月8日(土)から6月3日(土)まで
時間11:00 ~ 18:00
会場KOATRO NUKAGA(天王洲)