これまでの活動の集大成を披露

シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT] の2025年度アーティスト・フェロー5名(上田麻希、岸裕真、土井樹、藤嶋咲子、山内祥太)による発表「アート・インキュベーション・プログラム」が続々開催される。本年度の活動テーマ「これからのコモンズ」に基づき、作品展示や関連するトーク、制作プロセスをひらくイベントなどが、2026年1月から3月の期間にCCBTおよび都内各所で順次展開される。

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特設サイトURL:https://renewal.ccbt.rekibun.or.jp/

CCBTアート・インキュベーション・プログラムとは、クリエイターに新たな創作活動の機会を提供し、そのプロセスを市民(シビック)に開放することで、都市をより良く変える表現・探求・アクションの創造を目指すプログラム。公募・選考によって選ばれる5組のクリエイターは、「CCBTアーティスト・フェロー」として、企画の具体化と発表、創作過程の公開やワークショップ、トークイベント等を実施し、CCBTのパートナーとして活動する。

アート・インキュベーション・プログラム内容

上田麻希「Aerosculpture ver.2『匂う森』」「Olfacto-Politics: The Air as a Medium(嗅覚の力学 〜メディウムとしての空気〜)」
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嗅覚ゼミ「SMELL LAB」開催の様子

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嗅覚アーティストの上田麻希が、夜の夢の島熱帯植物館で3日間限定の展覧会「Aerosculpture ver.2『匂う森』」およびCCBTで「嗅覚の力学 〜メディウムとしての空気〜」を開催。「教育」「リサーチ」「表現」の3つのフェーズから、匂いを手がかりに、わたしたちが共有する空気とその循環を可視化し、体験化するプロジェクトを展開してきた上田による集大成の展示となる。

上田麻希

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2005年以来、嗅覚とアートの融合を試み、匂いをマテリアルとした作品を発表。欧米の嗅覚アート界の先駆者的アーティストのひとりとなる。2009年よりオランダ王立美術大学など世界各地にて教鞭を取り、多くの嗅覚アーティストを輩出。世界的な嗅覚アートの殿堂、アート・アンド・オルファクション・アワード・エキスペリメンタル・カテゴリーに5回連続ノミネート。2022年には最優秀賞を受賞。令和6年度文化庁長官表彰。現在は石垣島に嗅覚アート研究所を構え、嗅覚教育や嗅覚ツーリズムに取り組む傍ら、世界各地で展示やワークショップを展開する。

土井樹「Weather」「あたらしい天気」
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ワークショップ「天気をつくる」の様子

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音楽家であり科学者でもある土井樹が、従来の気象庁などによる広域データでは捉えられない、風の流れ、気温、照度といった微細な環境変化──「微気象(micro climate)」を、市民自らが観測し、データと観測行為そのものをコモンズとして共有するプロジェクトを進行中。展覧会「あたらしい天気」では、集められたリアルタイムの微気象データを用いたインスタレーション展示を千駄木の会場にて発表する。

土井樹

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音楽家、複雑系研究者、Alternative Machine Inc. シニアリサーチャー。社会性生物の群れの同期現象などをテーマに研究を行うとともに、 人工システムを含む「他者」が持つ固有の経験や感じ方を、その存在自身の立場から理解するための手段をテーマとして作品制作を行っている。主な展覧会に「ALTERNATIVE MACHINE」(2021年、WHITEHOUSE) 、「海の見方を忘れた」(2022年、Jinnan House)、「MONAURALS」(2023 年、WHITEHOUSE)、「Harsh Listening」(2025年、LEESAYA)。主な音楽作品に『Peeling Blue』(CD、2017年)。

岸裕真「平行植物園」「平行森林」

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夜の森を舞台に、脳を持たず何百万年も環境と呼応してきた 「植物の知性」に着目する展覧会「平行森林」を開催。木々や草花の微細な反応、風や光の変化をセンシングし、音と光のインスタ レーションへと変換する。初公開のプラットフォーム「BI(Botanical Intelligence)」は、植物からデータを受け取り、アルゴリズムを動的に変化させながら、人と植物の双方へ響きを生成する。

岸裕真
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撮影:手塚 なつめ

AIを「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」と捉え直し、人間とAIによる創発的な関係「エイリアン的主体」を掲げて、自ら開発したAIと協働して絵画、彫刻、インスタレーションの制作を行う。2023年よりほ ぼすべての制作において、AIモデル「MaryGPT」がキュレーションを担当。主な活動として、個展「Oracle Womb」(2025年、√K Contemporary)、参加展覧会「DXP2」(2024年、金沢21世紀美術館)など。受賞歴に「CAF賞2023」入選など。主な著書に『未知との創造:人類とAIのエイリアン的出会いについて』(誠文堂新光社)がある。

藤嶋咲子「コエノクエスト —都市に残されたセーブデータ」

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社会的な「正しさ」に埋もれ、誰にも拾われなかった個人の声を、遊び(Play)を通して掬いあげるゲームインスタレーション作品「Re: Play」を CCBTにて発表。来場者は仮想都市を巡るプレイヤー(Player)となり、多様なキャラクターの本音を集めていく。そこには、割り振られた性別や肩書き、家族における立ち位置、経済的・身体的な 境遇など、背負わされたロール(属性)のもとで揺れる思いが息づいている。

藤嶋咲子

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アート×ゲーム×社会問題を軸に、絵画やインタラクティブな手法を用いて、現代社会との関係性を探る多面的な表現を試みている。代表作「WRONG HERO」では、RPG的構造を通じてジェンダーや社会的役割に潜 むステレオタイプを問い直し、鑑賞者を“プレイヤー”として巻き込む批評的体験を構築。仮想空間で声を集め、現実の「出来事」として立ち上げた 「バーチャルデモ」では、鑑賞者の主体性とともに、現実と仮想の境界そのものを揺さぶっている。

山内祥太「未知との遭遇」

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光と音と身体が重なり合うインスタレーション&パフォーマンス「In Between...Us?」を発表。この場に立ち上がるのは、自然環境そのものではなく、人の知覚と感覚のあいだに漂う気配。その気配は、まるで何かが呼応しているかのように、絶え間なく形を変えながら環境に満ち、呼吸するように脈動する。

山内祥太
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撮影:Saito Seichi

1992年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。自己と世界との関係性や、現実と空想の裂け目を探る表現を試みている。 映像、彫刻、パフォーマンスに加え、近年では「匂い」を用いたインスタレーションなど、多様なメディアを横断しながら制作を行う。

「アート・インキュベーション・プログラム」開催概要

会期2026年1月30日(金)~3月22日(日)
URLhttps://tinyurl.com/2rk6u9tc