Tribute + Collaboration

ニューヨークを拠点とする現代美術家・松山智一の大規模回顧展「松山智一展 FIRST LAST」が2025年3月8日(土)から5月11日(日)まで麻布台ヒルズギャラリーで開催される。四半世紀にわたって現代アートの本場ニューヨークで活動し、いまや注目の次世代アーティストのひとりとなった松山の、日本初公開となる大規模作品15点を含む約40点が展示される。そのサテライト企画として、現代アートの分野に限らず、ファッション、食、音楽、玩具など、幅広い表現領域で松山がリスペクトする表現者とともに作り上げた協業作品も、本展入場者を対象に展示・数量限定販売される。

Tribute + Collaboration 1

Tomokazu Matsuyama x A-POC ABLE ISSEY MIYAKE
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© ISSEY MIYAKE INC. Photography: Zenharu Tanakamaru

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© ISSEY MIYAKE INC. Photography: Zenharu Tanakamaru

松山智一と「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」の共同研究ともいえるべきコートとTシャツ。三宅一生が提唱した「一枚の布」のコンセプトをさらに発展させていくブランドA-POC ABLE ISSEY MIYAKEのデザインと、松山智一がとらえる多面的なイメージの描写が融合した纏う立体作品として仕上がっている。Tシャツは、独自の製法で編まれた無縫製ニットに、松⼭智一の「Cluster 2020」シリーズを再構築したものとなっている。

《Cluster 2020》
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《Cluster 2020》 2020 60 x 60 cm (33panels) Acrylic and mixed media on canvas

60cm四方の正方形カンヴァス33枚の集積によるこの作品は、新型コロナウィルスのパンデミックにより、世界の大都市がロックダウンに見舞われた時期に完成された。ニューヨークで当初2週間の予定で始まったそれは、延長を繰り返し松山の制作チームは長期の自宅待機を余儀なくされる。松山はメンバー一人一人の自宅にカンヴァスと画材を届け、ズームで毎日報告をしあいながら彼らはベッドルームをスタジオとして制作し、この象徴的な作品が生み出された。

Tribute + Collaboration 2

うまい棒 x Tomokazu Matsuyama

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誰もが目にしたことがある、国民的な駄菓子「うまい棒」と松山智一が共に作り上げたコンセプチュアルな作品。その「うまい棒」から《げんだいびじゅつ味》をリリースした。価格は発売当初の価格の1万倍となる「10万円のうまい棒」。特別な加工はない。あるのはコンセプトのみ、ただし50個しか存在しない。広く親しまれた商品にアートという概念を用いて新たな価値を創出することが出来るのか、という問いを社会に投げかけたい松山の想いに、販売元の株式会社やおきんが快く応え実現した。

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Tribute + Collaboration 3

BE@RBRICK x Tomokazu Matsuyama

東京を拠点にフィギュアなどの企画・販売を行うメディコム・トイ社が手がけ、世界的な人気を誇るクマ型ブロックタイプフィギュアBE@RBRICK。様々なアーティストやブランド、企業、キャラクターなどとのコラボレーションを展開している。アートと商業性の接点について思考を巡らす松山は、本展において最新シリーズ「First Last」の代表作《Passage Immortalitas》(2024)のイメージをあしらったBE@RBRICKで、2010年以来二度目のコラボレーションを実現した。

《Passage Immortalitas》(2024)
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松山智一《Passage Immortalitas》 2024
H267 x W470 cm Acrylic and mixed media on canvas

本作品の人物描写は、ルネサンス期の巨匠ボッティチェリの名作《チェステッロの受胎告知》(1489)を参照。背景となる室内空間は建築雑誌に登場するインテリア写真を複数組み合わせて作られていて、その中にポテトチップスの空き袋やハローキティ、中国にルーツがある日本の敷物用織物、緞通(だんつう)など無数の記号的要素が描きこまれている。中央の二人は、いわゆる「受胎告知」のシーンで大天使ガブリエルが聖母マリアに、受胎を告知する瞬間(=キリストの到来のはじまり)を表しており、美術史の中でも多くの芸術家が向き合ってきた聖書のシーンを描いている。

松山智一

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Photo: FUMIHIKO SUGINO

現代美術家。1976年岐阜県生まれ、ブルックリン在住。絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを発表。アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を制作する。バワリーミューラルでの壁画制作(ニューヨーク/米国、2019年)や、《花尾》(新宿東口駅前広場、東京、2020年)、《Wheels of Fortune》(「神宮の社芸術祝祭」明治神宮、東京、2020年)など、大規模なパブリックアートプロジェクトも手がけている。

「松山智一展 FIRST LAST」開催概要

会期2025年3月8日(土)~5月11日(日) ※会期中無休
時間月・火・水・木・日 10:00~18:00(最終入館17:30)
金・土・祝前日 10:00~19:00(最終入館18:30)
会場麻布台ヒルズ ギャラリー
URLhttps://tinyurl.com/4tuppav5