オンブレ(グラデーション)に包まれたパビリオン
ウィック・アーキテクチャー&デザインとランド・デザイン・スタジオは、伝統的なバブルティーの概念を新たな高みへと導いた台湾の会社、「Odd One Out Tea(オッド・ワン・アウト・ティー)」のサンタモニカ店のブランドデザインを手がけた。台北の旗艦店を含め台湾に2店舗を構えるOdd One Out Teaがカリフォルニア州サンタモニカに米国2号店をオープン。ミクソロジスト、紅茶専門家、ジェラート・マエストロのチームを擁して米国市場への進出をさらに加速させている。
本プロジェクトは、1980年代から有名なサンタモニカの歩行者天国、サード・ストリート・プロムナードにある既存の商業スペースを中心に展開された。モールの両脇に並ぶ伝統的な店舗に加え、中央の通路には歩行者の流れに合わせたキオスクスタイルの店舗が並んでいる。
ブランドDNAの注入
プロムナードを囲むキオスク・パビリオンのひとつを市からリースする入札を落札したOdd One Out Teaは、ウィック・アーキテクツ&デザインとランド・デザイン・スタジオに、ビジネスとブランドのエッセンスを取り入れた店舗の設計計画を依頼した。彼らは3ヶ月以内にサンタモニカ市に、プラン、レンダリング、素材ボードを含む非常に詳細なデザイン一式とコンセプトの証明を提出する必要があった。
本プロジェクトの最終的な目標は、台北旗艦店のDNAの一部を取り入れ、南カリフォルニアの文化も尊重した形で変貌させることだった。ブランドの中核をなすオレンジの強い配色は、最初のデザイン・セットで大きく取り上げられ、デザイン・チームはパビリオンの外観をオンブレー(グラデーション)・スタイルで強調することを想定していた。
交渉によるデザインスキーム
何十年もの間サード・ストリート・プロムナードは繁栄し、2000年代にはロサンゼルス地区で最も人気のあるショッピング街となった。しかし、パンデミック後の時代は消費習慣の変化が顕著で、その影響はプロムナード沿いにも残っている。そのため、市は本プロジェクトの成功が関心事となり、プロムナードの苦境にあえぐ北端に飲食コンセプトを増やそうとする現在進行中の計画と一致。従って、市はストリートの再充電と再創造を支援するために、進歩的な若いクライアントと協力することに重点を置き直した。とはいえ、綿密な交渉を要し、結果的にOdd One Teaにとって最適な方向で進み始めた。
色を重用した統一性
認可が下りた後、デザイナーは外観をカラフルにリブランディングするという特徴的な手法に尽力した。さらに、ローリングガレージドアを含む既存の建物のシェルは維持しながらも、ガラリと変わった内部の全面的な再設計にも注力。建物の前半分を開放し、客が注文をしたり、座って食事を楽しんだりできるようにした。
同社が職人技を駆使した調理工程に誇りを持っていることを伝えるため、デザイン・チームはフロント・カウンターの背後にガラスの仕切りを設け、店内での生産厨房が一覧できるようにした。さらに生産ゾーンを強調するため、パビリオンの外壁に窓をいくつか設け、通りすがりの人が厨房の作業風景を眺められるようにし、調理中の製品をよく見えるようにした。看板に関する自治体の制限に対処するため、同社は、ブランドを紹介するために外観から現れる一連の小さな長方形のブレード看板をデザインすることで、問題を回避した。
心地よい賑わいをデザイン
規制の厳しい市場でのブランド適応の課題に対処するため、デザイナーは豊富な経験と専門知識を活用し、ブランドの浸透を図りながらクライアントのビジョンを実現したとともに、地域の消費活動に関する課題解決にも貢献した。
ウィック・アーキテクチャー&デザイン
2006年にカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。商業用および住宅用の持続可能な設計と建設に取り組んでいる。建築家、LEED AP、主任デザイナーであるデイビッド・ウィックを中心に、自然と建築環境を融合させ、「自然空間」にいるのと同じくらい健康的でホリスティックに感じられる建物を創造することを目標としている。
ランド・デザイン・スタジオ
アンドリュー・リンドリーは1993年にオレゴン大学で建築学の学士号を取得した後、エリック・オーウェン・モス・アーキテクツ、ホジェッツ+フォン、ゲンスラー、ジョージ・ユー・アーキテクツ(GYA)など、ロサンゼルスの建築・デザイン事務所に勤務。2005年、アンドリューは、商業デザイン、小売店やレストランスペースのプロトタイピング、そしてそれらのコンセプトのブランド展開を追求する手段として、ランド・デザイン・スタジオを設立した。設立以来、ランド・デザイン・スタジオの専門分野は、リテール、レストラン、商業施設、シェル&コア・デザインにまで広がっている。