戦後の庁舎建築としては全国初となる重要文化財の指定

2022年2月9日(水)に香川県庁舎旧本館及び東館が国の重要文化財に指定された。戦後に建てられた庁舎としては全国初となる。県庁舎東館は建築家・丹下健三の設計により1958年に竣工し、柱や梁の軸組構造などにより日本の伝統的な意匠を鉄筋コンクリートで表現し、県民に開かれた庁舎とするためにピロティやロビーなどを配置した手法が評価された。

写真　小池 大

さらに庁舎とともに製作された南庭の石灯籠、受付カウンター、椅子などの家具類57点も建造物の価値と一体となし重要なものとして重要文化財の一部に指定されている。2019年12月に耐震工事を完了している。今回の重要文化財指定により全国の建築ファン、そして香川県民に親しまれる庁舎として機能し続けている。

香川県庁舎旧本館及び東館​　写真　小池 大

令和元年に耐震工事が完了

建物と地盤との間に免震装置を追加する工事を行い、防災拠点となる施設として十分な耐震安全性を確保しているこの改修は「国土交通大臣賞耐震改修優秀建築賞」を受賞した。

免震ピット

県庁舎東館１階はすべてが県民のための空間設計

県庁舎東館1階には執務室がなく、建物１階のピロティやロビー空間は県民のためのオープン・スペースになっており、平日は誰もが出入りできる。ここに配置されている家具類の多くは丹下健三によって設計され、桜製作所も製作に携わっている。壁画「和敬清寂」は香川県出身の画家、猪熊弦一郎の作品で、これらの作品は県庁舎東館の価値をさらに高めている。

世界から評価される県庁舎東館は映画のロケ地としても選ばれている

県庁舎東館は世界からも高く評価され、近代建築の保存に取り組む組織「DOCOMOMO(モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織) JAPAN」によって「文化遺産としてのモダニズム建築20選」に選ばれ、米ニューヨーク・タイムズの雑誌の特集「世界で最も重要な戦後建築25作品」では日本の建築として唯一掲載された。また2021年に公開された映画『Arc アーク』では、県庁舎東館が作品の中の重要な建物として登場している。