忘れ去られた都市空間を賑わいのある都市広場に再生する
CAATスタジオ・カンボジア建築設計事務所による、このプロジェクトの設計課題は、地下鉄サデギエ駅周辺の忘れ去られた都市空間を、賑わいのある都市広場として再生することであった。サデギエ駅はテヘランで最初に建設された地下鉄の駅で、交通のハブとして街で最も重要なターミナルのひとつと考えられている。
このハブは、通勤者が地下鉄からバス、タクシー、自動車、自転車まで、さまざまな種類の交通手段を利用することを促している。サデギエの交通交流施設により、乗客や地元の人々が立ち止まり、社会的に交流する中心地となり、下記のように、近隣に多くの環境破壊と無秩序をもたらすことになった。
- 歩道が車によって侵されること、またその逆も然り
- 旅客用駐車場としてこのスペースが占拠されることにより、視覚的公害が発生する
- 駅に続く歩道が混雑し、乗客や歩行者に不便を強いる
- 駅の入り口前にタクシー車両が集まっている
- 社会的、文化的な儀式を行うためのスペース不足
プロジェクトの実施により、下記の通りいくつかの問題が解決される。
- 広場のさまざまな用途(出店に適した場所、社会的な交流やイベントのためのスペース、緑の景観を楽しむ場所)を体系化できる
- 車と歩行者がすれ違わないような、タクシー送迎に適した場所を確保できる
- 地下鉄の乗客のための道を作る
- 上記3つの懸念事項を同時に解決し、干渉されることなく首尾一貫して運用できるデザインソリューションである
ゾーン内の地元業者と並んで歩行者や車両の流れを綿密に調査することで、まず、この駅で降りた乗客がごく短い時間間隔で近隣に広がっていく流れを形にすることがデザインプロセスの第一歩となった。車両ルート、地下鉄の乗客動線、北側道路の交点を調べることで、この3つの経路が交差する場所を特定し、そこを起点に波及させることで答えを導き出したのである。そして、この3本の線が交差する場所を波紋の中心とし、そこからすべてのイベントや機能を派生させていった。
最初の波紋は、タクシー乗り場となるメインの中庭の境界線を描き、タクシー乗り場のある東側に向かうにつれ、さまざまな機能が付加されていく。それぞれの波紋の間には地面から立ち上がるベンチや、出店者の陳列場所、緑地などが設けられ、座る場所を定めている。この円形の波紋の中心には強い歩行者軸があり、業者と歩行者が交流する場を作り出している。波紋が西に向かうにつれて、公共のイベントや社会的な交流のために割り当てられた空間へと誘導される。この共通言語を通して、CAAT Studioは都市空間と交通の要所を作り出したのである。
CAAT Studioについて
CAAT Studioの主な焦点は、さまざまなプロジェクトテーマと、それに対する創造的なソリューションの提供で、革新的なデザインはユーザーの経済的、文化的、社会的な現実、敷地の立地、さらにはプロジェクトの規模に左右されないと信じている。ミクロからマクロのスケールで社会の全領域をカバーし、常に用途に適した新しいタイポロジーのアップグレードと創造をし、急速に起こる人間社会の関係性の変化に対応できるような空間を生産することを目標としている。CAATの特徴的な点として、素材や経済コスト、立地、気候などにこだわらず、空間を最適化するための手段を講じることができると考えており、「つまり、建築はみんなのもの」というのがスタジオの考えである。その例として、カフリザック住宅、マハラート住宅、イスファハンHtoVハウス、カミヤラン市立学校などがある。