木材と光が織りなす開かれた公共建築が高評価
高槻城公園芸術文化劇場が日本建築学会による「日本建築学会賞 作品賞」を受賞した。同アワードは国内の建築分野で最も権威あるアワードの一つとして知られ、今回は60作品の応募の中から最上位に選出された。劇場の受賞は通算5回目であり、主要建築アワードを次々と受賞する快挙となっている。
劇場は2023年3月18日に開館。かつて城下町として栄えた高槻城の二の丸跡地に建設され、城の堀や塀を想起させる外構や、格子戸を模した木材の外壁など、歴史的景観と現代建築が融合するデザインが特徴。エントランスは公園の散策路と一体化しており、劇場としての機能だけでなく、日常的な市民の憩いの場としても親しまれている。
ガラスと木材による開かれた構造と音響空間の融合
建物全体にはガラスを多用し、光と視線が通る開放的な空間を実現。内装では地元産の木材を積極的に使用し、手すりや床面、案内板にまで自然素材が取り入れられている。特に大ホール「トリシマホール」では、2万7千個もの木製キューブが壁と天井を覆い、優れた音響性能と象徴的な空間演出を同時に成立させている。劇場は公演がない日でも施設内を自由に通り抜け可能で、子どもたちや市民が気軽に立ち寄れる「広く開かれた公共建築」として高く評価された。
受賞歴とプロジェクト概要
高槻城公園芸術文化劇場はこれまでに以下の主要建築賞を受賞している。
- JIA優秀建築賞2023(日本建築家協会)
- BCS賞(日建連表彰2024)(日本建設業連合会)
- 第4回日本建築士会連合会建築作品賞大賞(日本建築士会連合会)
- 第43回大阪都市景観建築賞(大阪府・大阪府建築士会)
- 日本建築学会賞〈作品賞〉2025(今回)
施設概要
- 所在地:大阪府高槻市城内町
- 設計・監理:株式会社日建設計
- 施工:株式会社大林組ほか
- 建築面積:5,438.86㎡
- 延床面積:17,273.65㎡
- 竣工:2022年8月31日
- 開館:2023年3月18日
旧高槻市立市民会館の機能を引き継ぎつつ、北摂最大級の収容力を誇る大ホール「トリシマホール」(1,505席)を中心に、小ホール「太陽ファルマテックホール」(205席)、スタジオ機能を有する「サンユレックホール」などを整備。外構には堀や塀を復元的に配し、現代における歴史的再解釈を試みている。