建築・生態系・鳥類保全を結びつけ、都市のバードサンクチュアリーを体感的に観察する「見えない博物館」
Studio Link-Arcが手がけた中国・順徳の順徳にある湿地ミュージアム「Shunde Yunlu Wetland Museum」は、2万5千羽のシラサギが生息する生態島に隣接し、雲露湿地公園内に位置している。施設はバードウォッチングタワーと博物館を兼ね備え、湿地環境への理解を深めながら、野生生物の姿を間近に捉えられる体験型の場として設計されている。
この場所の起源は26年前に遡る。「鳥おじさん」として知られる鮮全輝氏(Xian Quanhui)が竹林を植えたことをきっかけに、この土地は渡り鳥の避難地となり、やがて地元で“シラサギの楽園”と呼ばれる存在へと育っていった。現在、順徳政府は保護区域を大幅に拡大し、研究者やデザイナーらと協働しながら水系の回復や竹林更新を進め、正式に雲露湿地公園として整備した。
建築家はその背景に応える形で、建物の存在感を抑える設計を採用した。博物館は杉林の奥に配置され、水平回転する4つのコンクリートチューブを積層した構造となっている。これらの開口部は、それぞれ異なる生態シーンを切り取る“レンズ”として機能し、建築が自然の前面に出ない構成を生み出している。対岸の島から眺めると、建物は亜熱帯林に溶け込むように姿を消す。
内部では各チューブが異なる高さから周囲の植生を眺望できる方向へ振られており、根から樹冠、梢に至るまで視線が変化する。館内を移動しながら、揺れる木陰や鳥の飛翔を異なる高さから観察でき、人間中心の視点を自然中心へと転換する空間構成になっている。
4つのチューブは縦に走る三角形のアトリウムによって貫かれ、各階が立体的に連続する。このアトリウムは視点を共有する場でもあり、先端の開口部は風景画のように景色を額縁化して見せる。
構造は箱型のコンクリートシステムを採用し、壁・床・天板が一体的に荷重を支える。上部の天窓から柔らかな光が落ち込み、四季の変化や自然のゆらぎが内部でも感じられるようになっている。
また、環境への配慮として既存の560本の樹木を調査し、建物の占有面積を縮小しつつ各階を回転配置することで伐採を最小限に抑えながら良好な観察視点を確保した。
外装には松材型枠による打放しコンクリートが使用され、その木目が周囲の森林の質感と呼応する。屋上にはハス池が広がり、湿地の景観を取り込みながら建築の存在はさらに穏やかに溶け込んでいる。
- West elevation of the wetland museum Photo credit: Tian Fangfang
- View of the wetland museum under the palm tree Photo credit: Arch-Exist
- View of the viewfinders from the second-floor terrace Photo credit: Tian Fangfang
- North-side stairs Photo credit: Tian Fangfang
- View of atrium from the third floor Photo credit: Arch-Exist
- Fifth elevation Photo credit: Tian Fangfang
- Site model Photo credit: Studio Link-Arc
- Model Photo credit: Studio Link-Arc
Studio Link-Arc
ニューヨークに拠点を置く、国際的な建築家およびデザイナーのチーム。社名である“Link-Arc”は、同社の協働的な姿勢と、都市計画、建築、空間芸術、ランドスケープといった複数の領域を横断しながら戦略とデザインを創造していくという使命を意味し、多様な視点とバックグラウンドから得られる知識・資源・知性を結び合わせることで実現している。

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