建築デザイン事務所 プロヴァンスロイによるビジネススクール新校舎がまもなく完成
モントリオール大学のビジネススクール「HECモントリオール」の新校舎がモントリオールのダウンタウンに建設中で、その完成が間近となっている。建物のデザインは、モントリオールの建築デザイン事務所プロヴァンスロイが手掛けた。近代的でダイナミックな外観でありながらも、土地の歴史と伝統に敬意を表し、環境に配慮した設計で、地域に開けた学校となる予定だ。モントリオールビジネスの中心街に建てられる新校舎は、学問と研究の現場とビジネスコミュニティとの繋がりを深め、起業家精神の育成に貢献することになるだろう。
新校舎の構想は、年々増大するHECモントリオールの規模を収容する場所の確保を理由に始まった。1996年に当時の新校舎を建設してから、生徒は64%、職員は68%も増えており、それに伴い、必要とされる活動の場が増えたのである。新しい校舎は、そのような場所不足の解消だけでなく、研究開発設備、AIなどの新興分野での共同研究設備なども完備し、モントリオールを牽引するビジネスとの連携の更なる強化を目指している。
LEEDゴールド認証の取得を目指す校舎は、27の教室と、300席の講堂、レクチャーやイベント用のセンターを完備。図書館やラウンジ、カフェ、中庭などの公共スペースも設け、緑地によって周囲と繋がることで、アクセスしやすく周囲に開けた施設となっている。
3つのメインエントランスからアクセスがしやすい下層階には、ミーティングスペースなど、人が集まるための機能を集約。上の階には、教室を配置し、上層階には、ミーティングルームと教室の他に事務局や社会人教育部門を設けた。建物の北西側は研究センターとなっており、そこでビジネスリーダーや研究トップによる、新興分野におけるコラボレーションが行われる。
新校舎が建てられているのは、1860年代に運用されていた、アイルランド女性のためのシェルター跡地。シェルターが取り壊された後は緑地となり、コミュニティには意義深い文化遺産として大事にされていた。また、地域のランドマークであるセントパトリック大聖堂が敷地の隣には建っている。ロケーションへの調和を目指すため、歴史や伝統に配慮した、ラドスケープも含めた繊細な設計が求められた。
大聖堂に面した建物の北西側は、周囲からの大聖堂の景観をブロックしないよう、大聖堂の庭と緑地で繋がるようにして距離をとって建てられ、またその高さも建物の他の面よりも低く、大聖堂への日射を妨げない配慮がなされている。
四方からアクセスできる建物の入り口から、24,000㎡の敷地を横断するようにふたつの通路が中央のアトリウムで交差している。天窓から差し込む光が5階分の吹き抜け空間に開放的な明るさをもたらす。アクセスしやすく景観を損ねないデザインは、独立した建物ではなく、地域の一部として機能することを意識して考えられている。
デザインの仕上げは、住民やステークホルダーと共に練られ、地域の歴史と伝統に配慮がなされているか、都市構造に調和しているか、シャレット(専門家が協同してデザインを行うまちづくりの手法のひとつ)や協議会を通して慎重に議論された。公共機関、住民、歴史家、ビジネス機関など、多方面からの意見が採り入れられて完成したデザインとなっている。
プロヴァンスロイについて
プロヴァンスロイは、30年以上の経験を誇る、カナダを代表する建築デザイン事務所。建築、都市計画、都市デザイン、ランドスケープ、インテリアデザインなどを手掛ける。多分野の専門家350名ほどを抱え、研究所や教育機関、交通機関、複合施設など実現したプロジェクトは多岐にわたる。サステナブルで革新的な取組みが、カナダ国内だけでなく世界的にも評価され、170以上の賞に輝いてる。