インドの伝統建築がランドスケープに溶け込んだ大学キャンパスのデザイン

インド中央部に位置するインドールは、近年発展の目覚ましい商工業都市で、教育機関も数多く存在している。インドール中心街にあるプレスティージ大学の約13万㎡のキャンパス敷地内に、本部オフィスをはじめ、講堂、セミナーホール、図書館、カフェテリアなどが入る施設が建設され、インドの有名建築デザイン事務所のサンジャイ・プリ・アーキテクツがデザインを手掛けた。

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North east view, Photo credit: Sanjay Puri Architects

高さ20mの巨大な建物は、壮麗さとは真逆の佇まいを意識して作られた。北側から段階的に高さを増し、屋上テラスも含めた4階建てとなる建物は、これだけのボリュームを景観に見事に溶けこませており、開放的な学びのための空間を完成させている。

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Aerial view, Photo credit: Sanjay Puri Architects

インドールは、年間8ヶ月は30℃~40℃の高温が続く、暑さの厳しい地域である。それを考慮し、古来の知恵を用いた伝統的な建築方法を採り入れながら、人工的な照明や空調に極力頼らず、エネルギー効率の高い、サスティナブルな建物を目指した。

多目的スペースとなる中庭を建物内に散在させることで、自然光が間接的に降り注ぎ、建物の内側の各階を明るくしている。

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View of the courtyard, Photo credit: Sanjay Puri Architects

さらに建物内は、ランドスケープとの調和を意識しながらセクション分けされた空間を構築。建物内を対角に繋げる道を作り、開放的な中庭を各所に設けることで、建物内部を空気が自然に循環する構造となっている。

アクセスのしやすい1階には、フードコートや、講堂、オフィスなどを設置。2階には図書館が設置され、建物内を横断するようにかけられた橋でフロア内を行き来できるようになっている。教室が並ぶ3階は、各所に設けられた中庭より自然光が入り、そこから充分な換気も行われている。周囲に開けた中庭は、レクリエーション活動を行う場としても活用できる。4階にはすり鉢状の講堂が設置され、5階には事務オフィスや教職員用の設備が配置されている。

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View of the internal courtyard from roof, Photo credit: Sanjay Puri Architects

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View of the atrium from bridge, Photo credit: Sanjay Puri Architects

建物の東西と南側は、通気性のあるレンガ造りの壁で囲まれており、熱が建物内にこもらない造りになっている。地階とひと続きになった屋根は、アクセスのしやすい、巨大な共有スペースである。さまざまなスケールの空間を有したこの建物では、あらゆる活動を行うことが可能であり、機能性を備えた景観美がそこには完成されている。

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View of the stepped terraces, Photo credit: Sanjay Puri Architects

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North east view, Photo credit: Sanjay Puri Architects

サンジャイ・プリ・アーキテクツについて

サンジャイ・プリ・アーキテクツは、インドの建築家、サンジャイ・プリが1992年に設立した建築デザイン事務所。Archdailyの「世界の建築事務所トップ100」、Architizerの「世界デザイン事務所トップ137」、WAアワードの受賞など、世界的な建築メディアから高い評価を得ている。このほかにも、190の国際的アワードと100以上の国内アワードの受賞を含めた、多数の受賞実績を誇る。72名の専門家が、事務所のデザイン哲学に則りながら、コンテクストに適した革新的な空間を創出することで、デザインソリューションの進化に貢献している。