ランコムの生物多様性へのコミットメントを示す農園「Le Domaine de la Rose」がオープン

ラグジュアリーコスメブランドのランコムは、このたびブランドの生物多様性への取組みの一環として、農園「Le Domaine de la Rose」を開園した。フランスのグラース地方に作られたこの農園では、香料植物に関するイベントやトレーニングセッションの開催が2023年から予定されており、これらのイベントを通じてブランドの生物多様性保護のための具体的な取組みについて発信していく。

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ソース:Lancome

グラース地方の中心地にランコムが作り上げたのが、4ヘクタールにわたって広がるエコロジカルな農園「Le Domaine de la Rose」。ブランドがこの土地を買収したのは2020年だったが、その目的には、ブランドを象徴する原料であるバラや、その他の香料植物の栽培を行うことだけでなく、この土地が伝える遺産や天然資源を保護するため、生物多様性保護区を作り、はぐくむことも含まれていた。

農業的アプローチ

このドメーヌをひときわ特別なものとしているのは、栽培学上の多種にわたる知見が組み合わされ、用いられていることである。これは、サステナブルで、トレーサブル、そしてオーガニックな手法による香料植物の栽培に革新と発展をもたらすことを狙いとしている。ランコムは、アグロフォレストリーの手法を採用し、空積みの石垣や水路、樹木といった、ドメーヌが誇るユニークな農業上・建築上の遺産を継承している。ブランドが指針としている生物多様性調査で観察・記録されたところでは、ドメーヌには、163以上もの植物種が存在しており、33種類の鳥類や31種類のチョウ類、8種類のトンボ類、12種類のコウモリ類をはじめとする動物たちに住処を提供している。

建築的アプローチ

本プロジェクトは、パッシブデザインおよびバイオクライマティックデザインをベースとし、建築事務所NeMの二人の建築家、ルシー・ニネとチボー・マルカによって手掛けられた。プロジェクトでは、既存の空積みの石垣が伝統的な手法による修繕を施した上でそのまま残された。また、新たな農業用の建物は、石垣との調和に配慮しつつ自然環境に溶け込むよう建設された。すでに敷地内にあったプロヴァンス風住宅の建築的特徴を生かしながらリノベーションされたのがローズ・ハウスである。この建物は、グラース地方に古くから伝わる伝統と技術に忠実な色彩や素材を取り入れつつ、現代的な外観をまとっている。母屋の改装にあたっては、建物の外を覆う外装材、屋根、そして木工部は、全てピンク色に統一。ピンク色は、この地方の花々や植物の中に自然に存在しているだけでなく、グラースの家々のファサードにもしばしば取り入れられており、この地方の地域色の一つである。そして、この色はもちろん、ブランドイメージを反映した色でもある。

母屋の壁には、外壁側にラベンダーのわらと木質繊維の混合物を用いた断熱と、それを覆うピンク色の漆喰による仕上げが施された。また、雨水を利用した灌漑システムに加え、水の回収・再利用システムを備え、水の自給および再生可能エネルギーの活用を目指している。さらに、空調は、地中熱交換器による自然換気を併用した地中熱ヒートポンプによってまかなわれている。これらの一連の設備により、本プロジェクトは、BDM(サステナブル地中海建築、Batiment Durable MediterraneanまたはSustainable Mediterranean Building)のゴールド認証を獲得している。

また、「Le Domaine de la Rose」は、香料植物に関する専門的な知見、そしてランコムが香水作りについて持つ特別なサヴォアフェール(専門技術)の伝承の場としての役割も担っている。ここで新たに育ったロサ・ケンティフォリアを用いた調香は、2022年6月発売予定の新作の香水「La Vie Est Belle Domaine de la Rose」およびフレグランス「Maison Lancôme 1001 Roses」で楽しむことができる。