スマートでユニークなデザインのスマートオフィスビル
メルク社とFCエンジニアと協同して建築デザインオフィスの3deluzxeが手掛けたのは、ドイツ・カルスルーエに昨年完成した、FC Campus。 特徴的な壁面ガラスのデザインに加え、様々な最先端技術が採用された、スマートオフィスビルである。
世界初、スマートフォン素材を採用した壁面
当ビルでまず特筆すべき最先端な側面は、アップルのスマートフォンに使用されているシートを内蔵したガラスを壁面に採用したことである。ビルの壁面への採用は、世界初となる。シートに内蔵された液晶によって、調光や熱交換などがセンサーを通じてコントロールできる。その結果、壁面の多くを庇のない大きな窓が覆っているにも関わらず、夏場においても空調システムがほとんど必要ない。
採光が充分な明るい職場環境が求められる一方で、省エネの解決策として窓面積は小さくされがちなのが、近年の傾向であり、職場環境改善の上での課題であった。この高性能ガラスは、耐久性にすぐれ、効率的であるだけでなく、人に優しい建築デザインにも貢献しており、将来のスマートシティ構想には欠かせない技術のひとつとなるだろう。
先進的なエンジニア企業を象徴するデザイン
ディベロッパーであり、当ビルを社屋として利用するドイツのFCグループは、ポルシェや最先端医療機関など、革新的なプロジェクトを手掛けるエンジニアリング企業である。同社を象徴する先進的なデザインは、その配置や効率などにおいて、イノベーションとサステイナビリティを取り入れた独特の構図となっている。最も経済的でサステイナブルな形状のキューブをふたつ、異なった角度に配置し、下の駐車場を空洞にすることで祭壇のような表構に仕上げた。大きく独特なデザインの窓により、それぞれのキューブが異なる表情を持った彫刻のようである。
大きな窓は、オフィスが全ての面から効率よく採光できると同時に、全ての職場からの眺望を望むことができる。ファサードにおいても、効率や角度などの点からも熟考を重ねたデザインとなっている。
スマート、デジタル、利便性
オフィスは、壁を極力減らした開放感のあるオープンスペースとなっており、コミュニケーションを促すシェアスペースや、仕事に集中できるエリアに、都会的な雰囲気にマッチするファーニチャーを配置。専用のアプリで、館内の売店での購入や、周辺の公園のガイドなど様々なサービスの利用が可能。
プラスチック軽減のため、飲料水は地下水をくみ上げる井戸から提供。カーペットはプラスチックボトルやフィッシングネットをリサイクルした素材から作られている。地熱を利用した冷暖機能のある天井は、快適な温度設定を可能にし、電力は屋上の太陽光発電システムで賄われているため、外部からの電力は一切必要としない。
近隣環境の保護
当ビルは、工業団地と高速道路に隣接しながらも、木々や牧草地、小川などのビオトープに囲まれた、自然に近い環境に位置している。この、保護を必要とする環境において、デザインを邪魔しない半透明のパターンを窓にプリントすることで鳥の追突を防ぐなど、周辺環境を配慮した慎重なアプローチが求められた。屋外灯には、虫に害のないLEDを採用。植物や外壁を減らす演出照明は避け、周囲ではなく路面を照らす配光にした。
建物概要
タイトル | FC - Campus Verwaltungsgebäude |
用途 | オフィスビル |
所在地 | ドイツ、カールスーエ |
設計開始 | 2015年4月 |
建設期間 | 2018年3月~2020年5月 |
完成 | 2020年9月 |