山に囲まれた立地を最大限に生かしたデザイン

ロサンゼルスが拠点の建築デザイン事務所ANXが設計を任されたのは、南カリフォルニアに位置するシエラペローナ山の尾根を見下ろすなだらかな2万㎡ほどの区画にそびえる邸宅。ランドスケープに調和する開放的なデザインを重視し、自然とかかわり四季を感じながら暮らすことができる家を完成させた。

Rear Facade Night. Photo credit: Brian Thomas Jones

本プロジェクトのクライアントは、自身が勤める製造会社の施設とオフィスから1.5km圏内に位置する場所に、従来の家と同じ自然環境が維持できる邸宅を建てることを希望した。その結果、ユッカ、オーク、セージブラシ、ビーバーテイルカクタスが自生し、水無川が交差する未開発の砂岩地が新居の敷地に選ばれた。

Rear Facade. Photo credit: Brian Thomas Jones

この「Arroyオークハウス」は、周囲に開けた開放的な構造により、たくさんの自然光が降り注ぐ、地形と視覚的に一体化した建物となっている。ユニークな地形との繋がりを最適化するため、複数のパビリオンのような構造体が敷地を横断するように配置された。これらパビリオンの絶妙な配置と重なりにより、庭、テラス、デッキのスケールが変化し、外の景観が家の内部に浸透していくような効果を生み出している。この工夫により、周囲の半乾燥地帯の多様な風景を眺め、取り込み、堪能するための空間が実現している。

Entry / Stair Hall. Photo credit: Brian Thomas Jones

邸宅の外観は、ジンク（亜鉛）製の外壁で覆われた存在感あるボリューム。大きな窓を設置したことで遠くの稜線に目を向けることができる。また、この外壁は、雲の印象をとらえる半反射性も併せ持っており、動きのある景観に溶け込む効果を高めている。高架下を抜けて中へ入ると、そこは大きな開口部で外と他のパビリオンと繋がるリビングとなっている。リビングだけでなく、この階全体が大きな開口部で周囲に開けており、山や空の景色が視界に鮮明に飛び込んでくる。分割された各内部空間も、外部のテラスへと繋がっており、家の中にまで田園風景を連れてきてくれる。

Front Facade. Photo credit: Brian Thomas Jones

Pool Terrace / Second Floor Balcony / Exterior Stair. Photo credit: Brian Thomas Jones

プールテラスと隣接するオープンエアのリビングルームは、草原に面しており、その下には動物たちの通り道や散策路として機能する水無川が通っている。火災の影響を受けやすいこの土地は、気候や日照、季節の変化にも敏感であるため、住宅の配置や植物の仕様、灌漑の必要性を慎重に検討する必要があった。

Pool Terrace. Photo credit: Brian Thomas Jones

Second Floor Balcony. Photo credit: Brian Thomas Jones

パビリオンに取り囲まれるようにして景色と繋がるのは、外のリビングルームでもあるプール。上階のベッドルームからはさらに遠くのランドスケープに向かってデッキが突き出ている。連続性のある杉の素材感が、屋内と屋外の境目を曖昧にし、その一体感を高めている。

Pool Terrace / Second Floor Deck / Exterior Stair. Photo credit: Brian Thomas Jones

Pool Detail. Photo credit: Brian Thomas Jones

Exterior Detail. Photo credit: Brian Thomas Jones

ANX/アーロン・ニューベルト・アーキテクツについて

アーロン・ニューベルト・アーキテクツは、2006年、ロサンゼルスに設立された建築デザイン事務所。ランドスケープ、光、そしてマテリアルを詩的に編成することで体験を増幅させるような美しい空間を創り出し、我々に課せられた環境への責務を果たせるよう取組んでいる。住居やホテル、レストラン、商業施設、公共施設など、あらゆる分野でサステナブルでサイトスペシフィックなプロジェクトを手掛け、複雑でデリケートな環境問題に向き合うことで、コミュニティのウェルネス向上に貢献している。