急峻な地形に挑む住居「アスセナ・ハウス」
ブラジルの建築事務所テトロが提案するのは、熱帯雨林の豊かな自然に囲まれた住居「アスセナ・ハウス」。ブラジルのミナスジェライス州ノバ・リマ地域に位置するこのプロジェクトは、この地特有の急斜面に設置されており、難しい地形に設置されたからこそ味わえる、究極の「自然との共存」が実現した空間となっている。
プロジェクトチームは、この地に初めて接したときから、自然をそのまま維持することがプロジェクトの成功に必要不可欠であると理解していた。そこで、地形の性質を繊細に読み取ることで、自然維持のコンセプトに対応していった。その結果、急峻な地形に建物を建てるという課題を克服し、地上15mの樹冠を見上げると梢の間から空が見える。そんな自然体験が日常的にできる空間が完成したのである。
プロジェクトの始まりからあったのは「建築は地形に合わせるのもであって、その逆ではない」という認識である。建物は地面の上にそびえ立ち、動植物の生命は地面の下で育まれる。アートと自然がバランスよく調和し、木々の間の空いたスペースを形成する。木々や地形に手を加えることは一切ない。このコンセプトを出発点に始まった本プロジェクトでは、すべてのデザイン上の決定は、このコンセプトを強化するものとなった。
ランダムに配置された建物の黒い柱が樹木の幹と溶け合う。そして、その柱の上に浮かぶ白い家が森の中に突然現れ、訪れる人々に驚きを与える。木々の間を縫うように配置された建物。スラブの開口部や折り返しによって、梢の景色が行き渡り、ボリュームを生み出す流動的な形状で、家が浮いているように見える。建築は、自然の植栽と調和しながらも、その存在感を保っている。驚きと新しさは芸術の本質的な価値であり、カーサ・アスセナは自然の中に咲く白い花として自らを表現しているのだ。
Tetro(テトロ)について
建築家カルロス・マイア、デボラ・メンデス、イゴール・マセドによって設立されたテトロは、ブラジルのベロオリゾンテに拠点に、世界に向けて事業を展開する建築スタジオ。クライアントの要望と場所が提示する条件を注意深く研究するプロフェッショナルな実践を基に、常にユニークな解決策を模索している。自然との融合、単純で分かりやすい素材の使用、空間の探求といった基本的な考え方は、テトロのすべての作品に浸透している。