新しい素材や技術に対する鋭い感受性と探究心に彩られた膨大な作品群

戦後日本において抽象彫刻家・造形作家として活躍した多田美波(1924–2014)による大規模個展「多田美波 - 光、凛と ゆれる」が、東京都現代美術館で2026年8月29日(土)から12月6日(日)まで開催される。生涯でおよそ200点の彫刻作品と、500点に及ぶ建築関連作品を手がけた多田は、美術館という枠にとどまらず、公園、駅、市庁舎、ホテル、劇場など、都市のさまざまな場所に作品を残し、長年にわたり人々の生活空間の一部を形つくってきた。

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《周波数37306505》1965 アクリル樹脂、アルミ、鉄 東京都現代美術館蔵 「MOT コレクション Eye to Eye—見ること」(2024)展示風景 Photo: Masaru Yanagiba

多田は、高度経済成長期を背景に普及した工業素材や加工技術を、芸術表現に積極的に取り入れた先駆的作家のひとり。制作の手跡を感じさせない無機質な表面に、光の反射や透過、屈折、揺らぎといった有機的な要素を取り込み、移ろいゆく周囲の環境や鑑賞者の動きと呼応して表情を変える造形を生み出してきた。これらの試みはアカデミックな具象彫刻の規範から離れ、空間や環境との関係性を志向した戦後の抽象造形における展開と位置付けられる。光を単なる効果ではなく造形の中心として据え、美術、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断しながら空間そのものに働きかける実践によって、同時代の潮流のなかでも独自の立ち位置を築いた。

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《炭鉱》1957 鉄 炭労会館(1990年夕張市 石炭博物館に移設) 撮影:多田美波研究所

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《周波数373055MC》1963 アルミニウム 多田美波研究所蔵 撮影:野堀成美

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光造形 1968 ガラス、金属 皇居・新宮殿、東京 撮影:野堀成美

本展では初期の絵画、各時代の彫刻、作家本人が「光造形」と呼んだシャンデリアを含む照明の作品、およそ70点に加え、建築造形のパーツ、写真、スケッチなどのアーカイブ資料を展観し、約70年にわたる多田美波の仕事を俯瞰するものとなっている。

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光壁《黎明》1970 ガラス、金属 帝国ホテル 東京 撮影:作本邦治

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光造形《瑞雲》1973 クリスタルガラス、ボールチェーン リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 撮影:作本邦治

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《Space Eye No.4》1975 アクリル 多田美波研究所蔵 撮影:多田美波研究所

多田美波

1924年、台湾・高雄に生まれ、朝鮮で育つ。高校在学中に朝鮮美術展覧会へ出品し入賞。1944年、女子美術専門学校(現・女子美術大学)西洋画科を卒業し、1956年に第41回二科展、1957年第9回読売アンデパンダン展に油彩画を出品。1957年、東京・炭労会館のためにレリーフ《炭鉱》を制作。1962年、多田美波研究所を設立。代表的な彫刻作品に、半円球のアクリルにアルミニウムを蒸着メッキし鏡面のように仕上げた《周波数37306505》( 1965、東京都現代美術館)やステンレスの屋外彫刻《キアロスクーロ》(1979、東京国立近代美術館)がある。建築空間における仕事としては皇居新宮殿の光造形(1968)や約7,600個ものガラスブロックから作られた帝国ホテル 東京に設置された光壁《黎明》(1970)、紫雲をイメージしたリーガロイヤルホテル大阪の照明《瑞雲》(1973)などがあげられる。2014年に逝去。主な受賞歴に「第8回日本国際美術展優秀賞」(1965)、「第1回ヘンリー・ムーア大賞」(1979)、「第6回吉田五十八賞」( 1981)、「紫綬褒章」(1988)の受章、および「勲四等宝冠章」(1994)の叙勲。主な国内個展に「多田美波展」(1991、三重県立美術館)、「特別展 多田美波 ―光の迷宮―」(1991、渋谷区立松濤美術館)、「開館40周年記念 多田美波展  - 光を集める人 -」(2009、彫刻の森美術館)など。

「多田美波 - 光、凛と ゆれる」開催概要

会期2026年8月29日(土)~12月6日(日)
時間10:00~18:00
会場東京都現代美術館 企画展示室 B2F
料金一般1,600円/大学生・専門学校生・65歳以上1,100円/中高生640円/小学生以下無料
URLhttps://tinyurl.com/4mw59979