中国の伝統と美学を再定義する、建築家 フランクリン・アッジによるEP YAYING店舗
フランスの建築家、フランクリン・アッジの情熱とクリエイティビティが、ファッションデザイナー、セルジュ・ルフィユーのビジョンと融合し、中国のラグジュアリーメゾン「EP YAYING」の店舗に新たな建築コンセプトをもたらした。2021年に完成した中国の上海と嘉興、2022年完成のニューヨーク、そして2023年完成予定の北京の店舗。いずれもフランクリン・アッジによるコンテンポラリーな審美眼で、インテリアデザインからファーニチャーまで、トータルに監修されている。
「品質への誓い」を意味するEP YAYINGは、ルーツに立ち返り、中国伝統文化の復興と高級志向への回帰を目指している。アッジはオリエンタルな文化的側面と職人技を用いて、ブランドにふさわしい新たな美学を定義づけている。
2人のクリエイティブが創り上げる空間は、上海からニューヨークの店舗に至るまで、全ての店舗において、体験と散策をもたらす。翡翠やコンクリートなどの素材の持つ素の美しさと、漆と刺繍の仕上げの重なりなど、細部に至るまで「オクシモロン」を追求している。表面の粗さと滑らかさ、マット感と光沢感、伝統的な中国由来の素材の混合など、どの店舗においても、ミニマリズムとマキシマリズムのコントラストが映える個性的な空間がそれぞれに展開されている。
ファッションコレクションとアクセサリーコレクションを取り囲むのは、黒いメタルチューブの格子。格子の間には様々な形や色の荒削りな岩の板が組み込まれ、メタルチューブからつるされたり持ち上げられたりしているように見える。このインテリア・ランドスケープは、異なる要素の間で生まれる美学を強調している。
新しいブティックは、既存の建物に設置されたものもあれば、新たに建物を建築したものもある。上海の店舗は、植民地時代の建物をフルリノベーションしたもので、透過性のある開放的なデザインで、自然を取り入れながら外に開けた構造となっている。洗練された流動性のある空間づくりによって、ブティックの空間が公共スペースに溶け込むように馴染んでいる。床から天井、家具から試着室に至るまで、全てが流れる動線の中に組み込まれ、全体を構成する美学と感覚と共鳴している。
空間にモダニティとクラフツマンシップの対話を生む建築デザインは、それぞれのEP YAYINGブティックに特別な魅力を与えている。
受賞実績:
- 「アーキタイザー A+アワード2022」リテールカテゴリー、ファイナリスト
- 「Dezeenアワード2022」ラージ・インテリア・リテールカテゴリー、ロングリスト
- 「Frame Awards 2022」ノミネート
フランクリン・アッジについて
フランクリン・アッジは、2006年、フランクリン・アッジ・アーキテクチャーを設立。建築、インテリア建築、デザイン、現代アートを通して、あらゆるスケールや種類の空間をデザインする方法を模索している。
2024年竣工予定のパリの超高層ビル、モンパルナスタワーの大規模リノベーションプロジェクトにおいては、「垂直型都市」「低エネルギー消費」「ダイナミック」「パワフル」などのヴィジョンの実現を目的としている。本プロジェクトにはNouvelle AOMと共に2017年から携わっており、現代の課題と向き合いながら、街に新しいアイデンティティを吹き込むようなランドマークの建設を目指している。
フランスの老舗高級レストラン「トゥールダルジャン」の歴史的な大規模リノベーションも現在進行中。レストランの歴史的背景に敬意を表しながらも、今の街並みにふさわしい現代的なヴィジョンをプラスすることで、パリ市民だけでなく世界に向けて新たな姿を発信していく予定だ。
アッジは、案件のスケールや公私、国境などを問わず、全てのプロジェクトにおいて、デザイナー兼建築家としての使命を果たすべく取組んでいる。その結果として、未来の居住空間やワークスペースを編み出したり、今の環境を尊重しながら進める都市計画の提案、そして取り外し可能な可動性のある構造の提案などを実現してきている。新たな可能性への地平線を見出し、サステナブルでコンテンポラリーなアプローチで、エンドユーザーに利益をもたらす結果を残している。