第1期から15年後に完成した第3期

建築デザイン事務所ダウスト・レスタージュ・リゾット・ステッカー社によるプロムナード・サミュエル・ド・シャンプランは、カナダ・ケベック州にあるセント・ローレンス川沿いの高速道路と鉄道通路2.5kmを、レクリエーションと文化プロジェクトのための理想的なキャンバスに変えるプロジェクトである。第1期から15年後に完成した第3期は、同じデザイン言語を継承しながらも、より個性的で充実したビジター・アメニティを提供できるよう進化した。

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Beach sector; reminiscent of the Foulon Beach as a converging place
Photo credit: Adrien Williams

かつてこの地域は街の住民にとって越えられない壁だったが、高速道路が都市の大通りに変わり、さらに線路が移設されたことで約15万平方メートルの土地がリバーフロントのアクティブなモビリティのために解放された。このプロジェクトはケベック州政府が首都のレガシープロジェクトを推進する社会的ミッションのひとつで、マスタープランから建築、ランドスケープデザイン、アーバンファニチャーやサインに至るまで、あらゆるスケールを網羅する学際的なアプローチが採用されている。

このプロジェクトはセントローレンス川の存在感を増幅させるとともに、この土地の本質を捉え、歴史的背景と沿岸生態系の特徴に尊重してている。木材貿易と造船業に根ざしたこの地域の豊かな歴史からインスピレーションを得て、建築スタイルは19世紀初頭の実業家たちの創意工夫を反映し、現代的な解釈の中に強さとシンプルさを見出している。最終段階は、前世紀にこの地域を活気づかせた「プラージュ・デュ・フーロン」を彷彿とさせるビーチの開発で、これらはプロジェクト全体の魅惑的な中心となる。

メインのサービス棟であるパヴィヨン・デ・ベニュールのデザインは、2つの長方形のボリュームの細長いフォルムを体現。花崗岩で造られた1つ目のボリュームは湾曲した海岸の壁から伸びており、木で造られた2つ目のボリュームは花崗岩の土台の上に位置し、景観のパノラマビューを提供している。このビーチのデザインは建築プロジェクトが提供できる社会貢献を象徴し、年齢や経歴、社会的地位に関係なく、誰もが利用できる市民の新しいレクリエーションの場として機能している。

ビーチを挟んだプロムナードは多様な機能と雰囲気を備えている。西側には海岸沿いの草原を模した一連の庭園があり、自然の輪郭と海岸の原風景に特徴的な植物の構成が調和している。一方、東側ではドックサイドの歩道が既存の湿地帯を強調し、広大な緑の平原へと導いている。さらに、パヴィヨン・ド・ラ・ヴォワール、スポーツ施設、ピクニック・プラットフォーム、川の自然エッジへのアクセスは、多目的なスペースにまとまっている。

プロジェクトはこの放置された地域に生物多様性を回復させる機会ともなり、1,055本の樹木、28,950本の低木、117,000本の在来草本植物が植えられた。また、サン・ミッシェル湿地の活性化にも取り組み、この地域の動植物にとって重要な生態系を保護。多方面にわたる努力の結果、環境にシームレスに溶け込んだプロジェクトが完成し、開幕以来、来場者の間で大きな反響を呼んでいる。利用者に有意義で楽しい体験を提供すると同時に、公衆衛生、エコロジー、生物多様性、気候変動対策に関連する目標を支持するという目的に見事に合致している。

ダウスト・レスタージュ・リゾット・ステッカー社

ダウスト・レスタージュ・リゾット・ステッカーは1988年以来、建築、ランドスケープ、都市デザインの分野に携わる。あらゆるスケールのデザインに関わる学際的な事務所として、伝統的なデザイン手法の限界に橋を架け、都市デザイン、建築、ランドスケープ、グラフィック、インテリア、工業、家具デザインの境界を解消することに努めている。プロジェクトごとに敷地とその周辺環境の本質的な資質を注意深く読み解くことから始め、断固として現代的な言葉を通して過去の痕跡を明らかにし、様々な性質と範囲のプロジェクトを実現する能力を示している。