シルクスクリーン版画作品など新作9点が展示

木村秀樹の4年ぶりとなる個展「青磁・水鳥」イムラアートギャラリーで2024年5月8日から5月25日まで開催される。1970年代より現在に至るまで、現代版画における代表的な作家のひとりとして、また画家としても国内外で活動する木村秀樹。版画家として鮮烈なデビューを飾った後、主にシルクスクリーン技法で制作しながら紙、ガラス、キャンバスと多岐にわたる支持体を駆使し、絵画と版画の融合した作品も発表してきた。

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《Celadon・Lake 翠い湖》100×143.5×109 cm / Celadon Ceramic, Wood / 2024

1980年代にはシルクスクリーンの技法を用いて、水鳥のイメージを描いた作品「水鳥のシリーズ 」を制作。シリーズの制作休止から約40年の月日を経て、再び「水鳥のシリーズ」に取り組むとき、木村がメディアとして新たに選んだのは「焼き物」であった。本展では作品の中心に青磁の水鳥と波紋タイルを据えた、ミクストメディアによる立体作品《Celadon・Lake 翠い湖》、《Celadon・A Water Bird on the Pool》と青磁の水鳥の写真画像を使用したシルクスクリーン版画作品など、新作9点が展示される。

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Silkscreen on Arche 88 56 X 76 cm / 2023

今回の展示構成の主となる「青磁の水鳥と波紋タイル」は、成形に3Dソフトやプリンターを用い、出力されたプラスチック製の水鳥 / タイルを手作業で成形、その後型取り、粘土を鋳込み、乾燥させ、素焼き、本焼きと複雑な制作プロセスを経て完成された作品となる。かつて家業であった陶器屋、粟田焼への思いも寄せて制作された新作を楽しむことができる。

作家ステイトメント 主題「水鳥」について

それは何気なく組んだ腕の姿が、水鳥のように見える事を、偶然発見した所から始まりました。1980年代の初頭だったと思います。その後、友人たちをモデルにして、意図的に水鳥に見えるようポーズをとってもらい、画像を多々採集するうち、これを使って何か面白い事が出来るのではないかと思い始めました。
腕と水鳥のダブルイメージは、両義性のイメージと読み替えることができますが、どっち付かずの、あいまいな、確定不能性のアナロジーとも言えます。この一種のつかみ難さを中核に据える事で起こるはずの、不完全感/ 未完性感 / 混乱 / いらつき等々の中で行われる制作とは、意外と面白いのではないかと思いついたのです。

「水鳥のシリーズ」は、両義性のイメージ/確定不能性を制作の中核に据えることで生まれる、揺れの中で、思考の諸相を、メディア横断的に検証する事と言えるかもしれません。1983年頃にスタートしましたが、それは、1986年頃一旦休止という形で終わる事になりました。それから約40年の間隔をおいて、メディアを青磁の焼き物に置き換えて、この度の個展に結びついたという訳です。

実は私の祖父は明治から大正にかけての時期、京都で粟田焼と呼ばれる陶器の製造に携わっていました。美術大学に入学したものの、陶芸にはとんと縁のない半生を過ごしてしまいましたが、ここに来て6歳で死別した父親を思い返す事も多くなり、一度くらい陶器屋の息子らしい作品を作ってみたいと思う様になりました。一連の作品のタイトルに Reunion・絆という言葉を使用した理由の1つには、家族の絆という意味を暗示したかったからです。そしてもう1つは、自身の制作史において、1986年の制作と2024年の制作の間に、絆を確認する事は出来るのか? という興味がありました。

青磁の焼き物は、唯それだけで美しいです。この事に疑問の余地はありません。
ご高覧賜りますよう、お願い申し上げます。

木村 秀樹

木村秀樹 個展「青磁・水鳥」開催概要

会期2024年5月8日から5月25日まで
会場イムラアートギャラリー
URLhttps://tinyurl.com/375xdvm6