キース・ヘリングの活動を絵画、映像、写真などから考察する展覧会「Keith Haring: 360°」
キース・ヘリングの多岐にわたる活動を絵画、映像、写真などから考察する展覧会「Keith Haring: 360°」が、中村キース・ヘリング美術館にて2021年5月15(土)から2022年5月8日(日)まで開催される。キース・へリングは1980年代初頭、ニューヨークの地下鉄構内の空き広告スペースにチョークで描いた「サブウェイ・ドローイング」によって一躍有名になった。1981年の初個展以前よりクラブやシアターなど画廊以外の場所でも自らキュレーションをして展覧会を開催するなどその活動は多岐に及ぶ。
そして「ドクメンタ7」(1982年)や「ヴェネチア・ビエンナーレ」(1984年)といった主要な国際展にも選出されるようになり、アーティストとしての地位が確立されていった。没後30年を経た今でもその人気は衰えることがない。シンプルで明るい印象が 強いヘリングの作品だが、子どもたちへの支援、反戦・反核、人種やセクシュアリティーに対する差別撤廃、HIV・エイズ関連のアクティビズムなど、問題提起が多く含まれている。また美術史への深い洞察やテクノロジーへの強い関心など、空間軸や時間軸にとらわれない眼差しで世の中を描写した。
本展のハイライトとなるのは、彫刻作品《無題(犬の上でバランスをとる人)》(1989年)。へリングの彫刻といえば、まるで二次元から飛び出てきたような平面的な形が組み合わさったフィギュアで、目を引くようなビビッドな作品が代表的だが、本作は生のアルミ素材が渋い輝きを放つ。彫刻のまわりをぐるりと一周すると見る角度で異なる像が現れる。人が犬の上に乗って無邪気に遊んでいるようにも見え、また作品タイトル通り、なんとかバランスをとっているようにも見える。人間と動物との共存関係や、その像のポーズは測り知れない未知の社会に対する不安を思い起こさせるだろう。
また本展では、アーティストであり美術ジャーナリストの村田真が1982年12月から翌年1月にかけてニューヨークでヘリングに密着取材した際の一連の写真群も初公開される。そのほか、防水布にペイ ントを施した絵画作品《無題(KH.200)》(1982年/高知県立美術館蔵)、東京都多摩市で約500人の子どもたちと描いた壁画《マイ・タウン》、《平和I-IV》(1987年/多摩市文化振興財団蔵)、そしてアムステルダムで制作され、新たに当館コレクションに加わった全6点の版画シリーズ《バッド・ボーイズ》(1986年)も披露される。本展はヘリングの多角的な芸術性と社会への深いメッセージを360°のアングルで再考する構成となっている。
中村キース・ヘリング美術館
わずか31年という短い生涯にすべてを表現し、希望と夢を残していった1980年代のニューヨークアートのレジェンド、キース・ヘリング。 中村キース・ヘリング美術館は、八ヶ岳の美しい自然の中で静かに彼と向き合い、ヘリングの芸術とそのエネルギーを感じる事が出来る世界で唯一の美術館だ。2007年の開館当初よりグローバル社会におけるジェンダーの平等や文化活動の継承と発展、環境問題などを含む人類の本質的な役割を念頭に運営している。展示空間は文化や宗教、人種や性別を超えて自由な心の解放を祈願したヘリングの芸術概念と精神性に満ち溢れている。
Keith Haring: 360°概要
会期 | 2021年5月15(土)から2022年5月8日(日)まで |
開館時間 | 9:00~17:00 |
入館料 | 大人 1,500円、学生(16歳以上) 600円、15歳以下 無料 障がい者手帳をお持ちの方 600円(同伴者1名同額で入館可) |
休館日 | 定期休館日なし ※臨時休館についてはウェブサイトにて公開 |