松田智生氏インタビュー

私たちは私たちの生活と仕事を、都市または地方に定着させるべきだろうか? おそらく、最良の答えは両方である。

数年前に初めて友人の松田智生氏に会った。東京大学の先端科学技術研究センターのワークショップに、ミラノビコッカ大学のステファニア・バンディーニ教授によって、私たち二人は講演者として招待された。第7回目となった昨年のワークショップは、デザインの世界における「収束」の経験に焦点を当てた。

友情が始まって以来、私は三菱総合研究所(MRI)の主席研究員としての松田さんの仕事に心から魅了された。彼はしばしば日本の地方での魅力的で刺激的な出張に言及した。頻繁に地方出張するという夢のような仕事をしている彼を、多くの人は羨ましく思うだろう。

子供の頃から、旅行は建築に次いで私の主な情熱のひとつである。主に、私は平均的な観光の道から外れて秘密の場所を見つけるのが大好きだ。日本の南部を探索するために数年前に行った長くて美しい旅を覚えている。カメラと多くの好奇心を持って、電車、バス、徒歩で無数の場所を訪れた。それから数年後、私は赤いヴェスパスプリント150を手に入れ、そしてそれは私の人生を変えた。私は妻のヴァレンティーナと一緒に、暖かい季節の週末に田園地帯を探索し始めた。正直言って、この「ゆっくりとした」旅のやり方は、日本と日本人をよりよく理解するのに役立ったと言える。東京のような大都市に住んでいると、ほとんどの時間を自宅と職場の間で過ごすことに慣れてしまう。誰もが急いでいて、人々がより深いレベルでコミュニケーションするためには少しの時間しか残されていない。

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松田智生

コロナウイルスのパンデミックのために全世界が経験しているこの奇妙な瞬間は、私たちのワークライフバランスを再設計するためのまたとない機会である可能性がある。松田さんが最新の本を見せてくれたとき、私はすぐにピンときた。2017年以来、彼は働き方改革と地方創生を同時に実現する逆参勤交代構想を提唱してきた。それでは、本で言われている逆参勤交代とは正確には何か?そのコンセプトは日本文化にとって新しいものではない。江戸時代、徳川幕府は、将軍への忠誠を示すために、藩と首都の江戸(東京)とを1年交互に住むよう藩主に求めた参勤交代と呼ばれる政策を課した。松田さんが提唱した「逆参勤交代」も同様に「都会のビジネスマンに地方で期間限定型のリモートワークをするよう促す」発想だ。

この戦略は、国民のワークライフバランスの促進に苦労している日本に対して、いくつかの利益をもたらす可能性がある。2015年にすべての国連加盟国によって採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、「仕事の満足と経済成長の結合」を含む社会的、経済的、環境的持続可能性のバランスをとるため17の持続可能な開発目標(SDGs)を定めた。近年、50を超える日本の地方自治体がチームを組んで、地域社会の活性化を後押しするために「仕事」と「休暇」を組み合わせた「ワーケーション」というアイデアを推進した。その提携は、大都市から地方への移行を促進するために大都市の企業を引き付ける魅力的なワーケーション環境の開発に焦点を当てている。

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コロナウイルスの発生により、日本はオフィスで長い時間を過ごすことが依然として成功への必須条件と見なされている古い職場文化を見直す必要に迫られている。ジャパンタイムズの最近の記事は、現在の衛生危機に関するこの状況を分析した。「パナソニック、NEC、三菱商事など、数万人のスタッフにリモート作業を義務付けまたは推奨する企業が増えている。変化は、その国の企業がより柔軟な働き方を受け入れる能力、数十年前にさかのぼり、生産性や効率よりも、物理的に存在したかと長時間の忍耐を重視する職場の文化を覆すことができるかをテストしている。ウイルスが企業や労働者にリモート作業の現実を受け入れさせているにもかかわらず、多くの企業は実際には、企業が従業員をリモートで作業させるための設備や準備が整っていないことに不満を抱いている。」

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この前例のない危機は、大きなチャンスに逆転する可能性がある。松田さんから提案された逆参勤交代のおかげで、地方の小さな街が全国のワークライフバランスの改善、地方経済の活性化、大都市圏の過密を減らす原動力になるかもしれない。さらに、コロナウイルスに関するリスクを最小限に抑える今後数か月の間の強力な戦略になる可能性もある。「ワークライフバランスの県」としてリ・ブランディングしたおかげで、三重県は、ワーケーションの実施により、非常に有望な結果をもたらし、いくつかの企業を魅了している。

この本には、将来の日本(そして世界)に対する気づきが数多くあるので、大都市の経営者は是非読んでほしい。そしてこの本は、ポストコロナ時代における働き方改革と地域活性化を考える上で必読書である。

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(次ページ:松田智生氏へのインタビューが続く。)

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