みんなで学ぶアートと世界
森美術館では、開館20周年記念展として「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」を2023年4月19日(水)から9月24日(日)まで開催する。1990年代以降、現代アートは欧米だけでなく世界の多様な歴史や文化的観点から考えられるようになる。それはもはや学校の授業で考える図画工作や美術といった枠組みを遙かに越え、むしろ国語・算数・理科・社会など、あらゆる科目に通底する総合的な領域ともいえるようになってきた。
それぞれの学問領域の最先端では、研究者が世界の「わからない」を探求し、歴史を掘り起こし、過去から未来に向けて新しい発見や発明を積み重ね、私たちの世界の認識をより豊かなものにしている。現代アーティストが固定観念をクリエイティブに越えていこうとする姿勢もまた、こうした「わからない」の探求に繋がっている。そして、現代美術館はまさにそうした未知の世界に出会い、学ぶ「世界の教室」とも言える。本展は、学校で習う教科を現代アートの入口とし、見たことのない、知らなかった世界に多様な観点から出会う試み。展覧会のセクションは「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」に分かれているが、実際それぞれの作品は複数の科目や領域に通じている。また、企画展としては初めて出展作品約150点の半数以上を森美術館のコレクションが占める一方、本展のための新作も披露され、54組のアーティストによる学びの場、「世界の教室」が創出される。
現代アートを8つの教科で紹介
本展では、現代アートを美術や図画工作といった教科の枠組みから解き放ち、「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」の8つの科目別のセクションで紹介。作品を通して未知の世界に出会い、学ぶ、まさしく美術館がすべての人に開かれた「世界を学ぶ教室」となる展覧会となる。また、今回は小企画展の展示室も使い、1,800㎡を超える展示スペースで大規模に展開する。
国語
社会
哲学
算数
理科
音楽
体育
総合
出展作品の半数以上が森美術館のコレクション作品
パンデミックによる移動・輸送制限等により、世界の美術館で自館のコレクションやローカルなアーティストの活動に改めて注目する動きが見られた。また、SDGsの観点からも、作品輸送をはじめ美術館活動に要するエネルギーに関して、あらためて考える好機となった。本展は、出展作品約150点のうち半数以上を森美術館のコレクション作品で構成。現在約460点を有する「森美術館コレクション」は、展覧会を機に収蔵した作品も多く、森美術館のこれまでの活動の軌跡でもある。
現代美術史で参照すべき重要な作品を展示
現代アートをさまざまな視点から振り返る際に参照すべき重要な作品を展示。ジョセフ・コスースは作品の見た目ではなく、アイディアやコンセプトこそが肝要であるとした1960年代のコンセプチュアル・アートの主要作家で、この考え方は今日の現代アートの底流をなすもので、コスースの《1つと3つのシャベル》(1965年)はその象徴的な作品である。また、20世紀の美術史のなかで最も影響力のあるアーティストのひとりヨーゼフ・ボイスは、誰もが芸術家として柔軟な社会を作ることに参加する、拡張された芸術の概念「社会彫刻」を提唱した。本展では、彼が1984年に初来日した際、東京藝術大学の講義で使用し、その筆跡が残された黒板を展示。ボイス本人との対話は、その後アーティストやキュレーターになった多くの日本の若者に並々ならぬ影響を与えた。
世界的に活躍するアーティストたちの新作にも注目
ヤン・ヘギュは日系ブラジル人アーティスト大竹富江の彫刻作品や、エネルギー問題、気候変動など、世界のさまざまな事象を引用した新作インスタレーションを発表。他にヤコブ・キルケゴール、パーク・マッカーサー、宮永愛子による本展のための新作も展示する。
数字とインフォグラフィックで見る森美術館の20年
森美術館が開館して20年。これまで59の企画展、72の小企画展、そしてラーニングをはじめ数々の関連プログラムを行ってきた。展覧会の入口にはこれまで森美術館で展示を行ったアーティストおよびユニット名を出身地域毎に示した世界地図が登場。総勢約1,600組の名前を総覧することができる。また展覧会の出口では、20年の活動を振り返り、これまでの総入館者数やラーニング・プログラム数などを数字とインフォグラフィックで紹介していく。
「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」開催概要
会期 | 2023年4月19日(水)から9月24日(日)まで |
時間 | 10:00~22:00 |
会場 | 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階) |