1950年代から66年頃までの池田の作品とともに、影響を受けた作家の作品を紹介

長野県立美術館にて「とびたつとき-池田満寿夫とデモクラートの作家」展が2023年9月9日(土)から2024年1月5 日(日)まで開催する。池田満寿夫が1997年に亡くなって四半世紀が経ち、彼の版画作品がどれほどまでに世界で評価され、また彼が芸術家としての道をいかに情熱的に歩んだか、今日あらためて問いかけることには大きな意味があると思われる。本展では1950年代から1966年頃までの池田満寿夫の作品とともに、池田が影響を受け、また交遊のあった作家の作品を紹介し、当時世界を席巻した日本の版画を振り返る。

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池田満寿夫《タエコの朝食》1963年、長野県立美術館蔵

池田満寿夫は、1934年に旧満州国・奉天で生まれ、終戦の年に父母と共に長野に引き揚げる。長野県長野北高等学校を卒業後、画家を志して上京し、東京藝術大学を3回受験するも失敗に終わる。そうした頃、1955年に靉嘔(あいおう)と出会い、彼を通じて、デモクラート美術家協会を創設した瑛九(えいきゅう)や美術評論家の久保貞次郎を知ることになる。デモクラートの作家たちは多くの人に見てもらえる版画の制作に力を入れ、瑛九のすすめを受けた池田も若手のひとりとして、その活動に参加。そして泉茂や吉原英雄、加藤正らとの交流を深め、自身も久保の後援により銅版画の制作に打ち込んでいった。戦後、国力を回復してきた日本は、初の国際現代美術展として1957年に第1回東京国際版画ビエンナーレ展を開催。池田のほかデモクラートの多くの作家たちが同展に出品、入選し、彼らの飛躍のきっかけとなった一方、瑛九は同年にデモクラートの解散を決める。以降も若い作家たちは版画の可能性を拡張する旺盛な活動を見せ、なかでも池田は1966年のヴェネチア・ビエンナーレで版画部門国際大賞を受賞するなど、国際的な評価を受けて脚光を浴びていった。

展示構成

  • Ⅰ デモクラートとの出会い:1950 ~ 1956(展示室1)
  • Ⅱ 起点としての瑛九:1950 ~ 1957(展示室1)
  • Ⅲ 夜明けまえ:1957(展示室2)
  • Ⅳ それぞれのとびたつとき:1958 ~ 1966(展示室2)
  • Ⅴ 池田満寿夫 とびたつとき:1958 ~ 1966(展示室3)

出品作家

  • 池田満寿夫(1934 ~ 1997)
  • 靉嘔(1931 ~)
  • 泉茂(1922 ~ 1995)
  • 磯辺行久(1935~)
  • 瑛九(1911 ~ 1960)
  • 加藤正(1926 ~ 2016)
  • 利根山光人(1921 ~ 1994)
  • 舩井裕(1932 ~ 2010)
  • 吉原英雄(1931 ~ 2007)

見どころ

貴重な初期の油彩画から、受賞を重ね世界へと進出した1960年代の版画まで、池田満寿夫の作品を当時の資料と共に展示する。

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池田満寿夫《退屈な時間》1955年、広島市現代美術館蔵

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池田満寿夫《愛の瞬間》1966年、長野県立美術館蔵

靉嘔や瑛九に加え、泉茂や吉原英雄といった、長野県内ではあまり展示される機会がなかった関西デモクラートの作家たちを紹介。

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泉茂《闘鶏》1957年、和歌山県立近代美術館蔵

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靉嘔《田園》1956年、和歌山県立近代美術館蔵

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瑛九《旅人》1957年、和歌山県立近代美術館蔵

「とびたつときー池田満寿夫とデモクラートの作家」開催概要

会期2023年9月9日(土)から2024年1月5 日(日)まで
会場長野県立美術館 展示室1・2・3
時間9:00 ~ 17:00