浅井忠にまつわる資料を展示
京都伝統産業ミュージアムにて、浅井忠(あさい ちゅう、1856 ~ 1907)の多彩なデザイン等を集めた展覧会「浅井忠と近代京都のデザイン」が2023年5月28日(日)まで開催している。本展は、京都にある大学ミュージアムのコレクションから京都の伝統産業や芸術などを考える「京都の大学ミュージアム特集」の第1弾として開催。記念すべきこの初回展では、京都工芸繊維大学のコレクションから、その前身校のひとつである京都高等工芸学校で図案科の初代教授となった浅井忠にまつわる資料を展示している。
京都にある大学ミュージアムの協力のもと開催
京都市内の14大学、14のミュージアムが集結する「京都・大学ミュージアム連携」の協力のもと、京都にある大学ミュージアムのコレクションから京都の伝統産業や芸術などを考える特集が始まった。本展は記念すべき第1回として、京都工芸繊維大学から浅井忠と京都の美術工芸にまつわる資料を紹介している。
近代京都の伝統産業界に大きな影響を与えた 浅井忠と京都の美術工芸
京都工芸繊維大学の前身校のひとつである京都高等工芸学校は、明治35年(1902年)京都の伝統産業の近代化を理論的、技術的にバックアップし、世界に通用する新しいデザインを生み出す人材育成を目的に設立された。図案科の初代教授となった浅井忠は、工部美術学校を卒業後、十一会や明治美術会の活動を通じて日本の洋画の発展に大きく寄与し、東京美術学校西洋画科の教授をつとめた人物で、明治33年(1900年)に洋画研究のために渡ったフランスでアール・ヌーヴォーと出会い、デザインの面白さに目覚めた。帰国後すぐ京都高等工芸学校に着任した浅井は、同校でデザインの基礎となるデッサン教育に従事する一方、京都の伝統産業界の関係者らとともに遊陶園や京漆園といった研究団体を立ち上げ、新しい技術を用いた伝統にとらわれない趣向の陶磁器や漆器を次々と生み出した。明治40年(1907年)には、祇園に自身がデザインを手がける陶器店、九雲堂を開店させ、一般市民への流通をみすえた活動も始める。
浅井はアール・ヌーヴォーだけでなく、近世のデザイナーとも言われる琳派や日本の古美術、滋賀の民画である大津絵などにも深い関心を寄せ、熱心に研究をした。たしかなデッサン力をもつ浅井のデザインは、実物のかたちを正確にとらえつつ柔らかで愛嬌のあるものが多い。本展では、浅井忠の多彩なデザインが展示されるとともに、同時期に浅井らの選定によって京都高等工芸学校でデザイン教材として利用されたフランスのポスターや陶磁器もあわせて展示。明治末、京都の伝統産業界に大きな影響を与えた浅井忠の世界を、楽しむことができる。
「京都の大学ミュージアム特集1 京都工芸繊維大学コレクション―浅井忠と近代京都のデザイン」
会期 | 2023年4月14日(金)から5月28日(日)まで |
時間 | 9:00 ~ 17:00(入場は16:30まで) |
会場 | みやこめっせ地下1階 WEST SQUARE Window Gallery |
入館 | 無料 |