イギリス・インド・ペルー・メキシコに訪れ現地の染色技法を自分の作品へと落とし込む
BRIDGEは高野萌美による個展「THREAD POETICS」をGALLERY HAYASHI+ART BRIDGEにて、2022年7月15日(金)から7月24日(日)まで開催する。本展は高野の制作の中心を担う糸に焦点をあてた新作が発表される。高野萌美は衣類や日用品などに形を変え身の回りに存在している布(テキスタイル)を出発点に、それらが抱える社会・文化的背景と美術史が混交する地点を模索した作品を制作。
本展示は高野が作品のひとつひとつをより言語・詩的なものとして扱うことを意識しはじめたことから「THREAD POETICS(糸詩学)」と銘打ちした。高野の糸を積極的に用いた作品づくりの契機となったのは2018年にペルーへ渡り現地の伝統的な天然染色に触れた体験。同地で彼女は植物や昆虫などの有機物を用いて鮮やかな色を作る工程や木の棒と縄だけで複雑な模様の布を織る原始的な技法を目の当たりにし、時代を越え脈々と続いてきた文化の息遣いを感じた。
そこでは、ものが新たなものへと自然な形で昇華され、あるがままに行う行為全てが必然性に溢れていたんです。それから私は現地の人たちの姿勢を自分なりに解釈して、自分が育った日本にいるからこそできる表現は糸を用いてこそ、可能なのではないかと考えるようになりました。
アートコレクターズ 6月号掲載
人の手による日々の労働の積み重ねがやがて文化となり継承されていくという、小さくも壮大な人類の営みが凝縮されたアンデスのテキスタイルと出会い、高野はそれまでの社会に対する問題提起や制度批判などのコンセプト偏重の態度を反省し、日々の暮らしから生まれるささやかな興味や欲求と正直に向き合うことこそが自身の創作にとって重要であると考えるようになった。それは人工と自然、中心と周縁、秩序と混沌等あらゆる二項対立を超えた調和を求める姿勢とも言える。手織りの布や手紡ぎの糸、天然染色と大量生産された市販の布や糸、危険な化学物質による彩色を同列に扱い、それらを混ぜあわせできたものを壊し再構築することで、新たな視覚言語の獲得を試みている。
高野萌美 (Moemi Takano)
1993年神奈川県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジファインアートコース卒業。大学で現代美術史やその周辺の思想哲学を学んだのち、インドやペルー、メキシコなどに渡り現地の伝統的な染織技法に触れ、あらゆるもののデジタル化を経験しつつある社会への応答として身体的労力を要する手作業を中心とした制作スタイルを確立。布や糸を出発点に、60年代前後に出現したミニマリズム、ポストミニマリズムの作家たちの仕事を参照しながら「テキスト」と「テキスタイル」の可能性の模索を続けている。
展覧会「Thread Poetics」開催概要
出展作家 | 高野萌美 (Moemi Takano) |
会期 | 2022年7月15日(金)から7月24日(日)まで |
時間 | 11:00~18:00 |
場所 | Gallery Hayashi (銀座) |
主催 | GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE |
住所 | 東京都中央区銀座7-7-16 |