ベルリンのアーティスト ヘニング・ヴァーゲンブレスの傑作が並ぶ
UFOがモントリオールに着陸し、UQAMデザインセンターに珍しいグラフィック・オブジェの積荷を降ろしていった。その宇宙船の司令官はベルリンのポスターアーティストでイラストレーターのヘニング・ヴァーゲンブレスで、彼の世界は、ほぼすべての作品が戯画化された人間の存在感を示すコミック本のキャラクター、ロボット、ロケット、地獄の機械で構成されている。
イラストレーション、ポスター、書籍、切手、レコードジャケット、ゲーム、舞台衣装やセット、人形など、あらゆるグラフィックデザインの才能を開花させているヘニング・ヴァーゲンブレス。色彩豊かな彼の作品は一見ナイーブに見えるが、完璧なまでに考え抜かれた傑作である。東ドイツで育ったヴァーゲンブレスの社会への批判的な視線はイメージとして具現化され、皮肉なユーモアと鋭い風刺で彩られている。グラフィックデザインに対する彼の遊び心あるアプローチは見る人を引き付けるだけでなく、深刻な問題へ導きメッセージを投げかけてくる。
展覧会の様子
本展ではワーゲンブレスの代表的な作品である超大型のシリグラフィ・ポスターのほか、さまざまな印刷技術で制作された異なるフォーマットの作品が展示されている。アール・ブリュットを思わせるグラフィック・スタイルで、アイデアとイラストレーションのジャグラーであるワーゲンブレスの作品に来場者は魅了される。幾何学パズルのように切り取られたイラストレーションにワーゲンブレスが自らデザインしたタイポグラフィが組み合わされ、シュルレアリスムの死体からインスピレーションを得たと思われるような視覚的な不協和音を奏でている。視覚的な詩と、時に社会のあり方に傷つく繊細な子どもたちが織りなす世界が表現されている。
ヘニング・ヴァーゲンブレス
1962年東ドイツのエバースヴァルデに生まれ、1982年から1987年までベルリン・ヴァイセンゼー美術学校で学ぶ。以来主にイラストレーターとして活動している。グラフィックデザインや独自の書体を制作し、その創作過程には職人的な技術と工業的な技術の両方が含まれている。ベルリン在住であるが、パリとサンフランシスコにも滞在していた。切手からバナーまであらゆるフォーマットのイラストレーションやグラフィックデザインを手がけ、一枚の絵、一連の版画、本、ポスター、新聞、雑誌などを制作している。1994年よりベルリン芸術大学でビジュアル・コミュニケーションについて教鞭を取る。2000年にStiftung Buchkunstから「世界で最も美しい本」アワードを受賞したほか、ポスターや書籍で多くのアワードを受賞。世界各地で展覧会を開催し2002年よりAGIの会員となる。
UQAMデザインセンターについて
UQAMデザインセンターはグラフィック、インダストリアル、アーバンデザイン、建築、ファッションの各分野における歴史と現在のトレンドを紹介するカナダで唯一の展覧会開催。1981年にUQAMデザインスクールの教授陣のイニシアティブで設立されたデザインセンターは、デザインの専門家や学生、一般の人々を対象とした約350の展覧会を開催してきた。