ギリシャ神話の女神「ダフネ」に由来。月桂樹を模したインスタレーションがコンベンションセンターのロビーを彩る
2020年3月、アトリエ パスカル・ジラルダンは、シーザーズ・コンベンションセンターのロビーに「ダフネ」と題したアートインスタレーションを完成した。古代ギリシアの霊木として崇められた月桂樹を模した、白と金の無数の葉が広い空間に舞い上がり、ロビーを優雅に彩っている。ギリシャ神話で月桂樹に化身したダフネの物語が、ここラスベガスのコンベンションセンターで蘇る。
ネバダ州 ラスベガスのシーザーズ・コンベンション・センターは、ラスベガスの目抜き通り、ラスベガス・ストリップの5エーカー(約2万㎡)西に位置する、世界最大級のコンベンションセンター。LEEDゴールド認証を取得している施設は、2万㎡の舞踏広間をふたつ設けるなど、広大なフロアスペースを誇っている。
建築を手掛けたKGAアーキテクチャーは、高さ35フィート(約10m)のロビー空間のアートインスタレーションを、ホテルへのクリエイティブなアートワークの提供で世界的に有名なアトリエ パスカル・ジラルダンに依頼した。
施設のブランドイメージに呼応して、アーティストの頭に真っ先に浮かんだのが、不死のシンボルである月桂樹だった。大きな窓からふんだんに採り入れられた自然光の明るさのなか、ふたつの大きなモビールが、千枚以上のしなやかでスレンダーなカップを宙に舞わせている。これらのカップは、古代ローマより聖樹として崇められ大切にされてきた、月桂樹の常緑の葉を模している。
このインスタレーションは、直線的な構造に動きとしなやかさ、優雅さ、そして軽さを与えるだけでなく、有機的な形を表現することによって見る人の感性を刺激する。高さによってしなやかに変化するそれぞれのパーツが、三次元のパターンを造り出し、空間に詩的な奥行きをプラスしている。
いくつもの要素が相互に関わり合う、自然主義的な構造の「ダフネ」は、3つの壁で構成されている。それぞれが、月桂樹の由来となったギリシャ神話のニンフ ダフネが、アポロの愛から逃れるために月桂樹に変身した伝説を連想させる。
素材には、セラミックの媒体として、多様な形や質感を引き立てることができる展伸材のアルミが採用された。金色のアクセントを施した1,000枚を超える葉は、全てモントリオールで製作と組み立てを行い、現地に輸送された。
無数のディテールが幾重にも積み重なることで、時代を超えた空間が創り上げられるのです。
-パスカル
本プロジェクトは、芸術的な側面だけでなく、多岐にわたる仕様など精巧な側面も必要とした。技術的な知識に精通したプロ集団によって、輸送、輸出、メンテナンスなどの厳重な基準を満たしながら、慎重に設置が行われた。
そして完成したのが、時空を超えた普遍的な作品「ダフネ」である。
パスカル・ジラルダンについて
パスカル・ジラルダンは、独自のビジョンを注入した食器や建築インスタレーションで、陶器とビジュアルアートやデザインを繋げる活動を20年以上にわたり行ってきた。素朴で純粋な形にインスパイアされた表現は、我々と社会との基本的な関係性を思慮深くハイライトする。壁を装飾するように浮遊したり、水に浮かぶ彼女の作品は、自然の普遍性と有機性を思い起こさせてくれる。
アートと科学の両方に興味を抱いていたパスカルは、絵画を学んだ後、モントリオール大学にて物理を、米コンコルディア大学でデジタルテクノロジー分野のデザインを、ボンセクールセラミックセンターで陶器を学び、コンコルディア大学で美術学士号を取得している。直近では、モントリオールのケベック大学の文学修士号を取得。ピエール・ページ賞の授賞や、カナダ芸術評議会やケベック芸術文学評議会から奨学金を得るなど、数々の著名な栄誉に輝いている。
ブロードウェイの日本レストラン「Nobu」や、モントリオールのフォーシーズン、サックス・フィフス・アベニュー、ニューヨークの「クレメント・レストラン」、中国浦東新区のフォーシーズンズ・プライベートレジデンス、パリのプランタン、ドバイの「アルバディア・ゴルフクラブ」など、世界中の高級施設にアートワークを設置している。