急成長する街に静けさと遊び心をもたらす

アートスタジオ/デザインエージェンシーのNEONが、ロンドンのブレントクロス・タウンにあるネイバーフッド・スクエアに高さ4.3メートルの彫刻的な水のオブジェ《The Fountain》を設置した。ヨーロッパの公共噴水が担ってきた集いの場や象徴性、遊び場としての役割を現代的な視点で再解釈し、急速に発展する地区に合わせた新たな形で提示した作品となっている。

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

本作は都市広場で歴史的に親しまれてきた噴水の存在に着想を得て制作された。NEONはそこで生まれる“ひと息つく時間”を現代の街に再びもたらすことを目指し、人々に思いにふけることを促しつつも自然に関われる作品を追求した。噴水は、積層プレートをわずかにずらした柔らかな非対称性を特徴とし、見る角度によって姿を変える。これにより水の流れが多様な表情を見せ、音と動きが豊かな体験を生み出す。

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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Paulette and Fam with The Fountain
Photo credit: Cesare De Giglio

素材選びでは精度と耐久性が重視し、HI-MACSは色の安定性と耐候性に優れ、複雑な形状を正確に実現できることから採用された。縦要素のグリーンと水盤のターコイズという配色は、周囲の景観とのつながりを保ちながら、水を象徴する美しいコントラストをもたらしている。

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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The Fountain
Photo credit: John Sturrock

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Lana with The Fountain
Photo credit: Cesare De Giglio

《The Fountain》は空間体験そのものにも作用する。穏やかな水音は都市の喧騒を和らげ、住民や訪問者が座ったり会話したり、気軽に立ち寄ったりする時間を心地よくする。特に子どもたちは浅いプールや水の流れに直接触れて遊び、空間に活気を添える。NEON のマーク・ニクソンは、作品が「静けさと遊び心の両方の表情を持つよう意図した」と語り、人々の関わり方によって作品の性質が自然に変化する点を重要視している。

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Julie and Buster with The Fountain
Photo credit: Cesare De Giglio

公開に合わせて、地域への参加を促す取り組みも実施された。写真家チェザレ・デ・ジリオと協働し、NEONとプロジェクトパートナーは、地域住民に“未来への願い”を共有してもらうポートレート企画を行った。これは、噴水に願いを託す伝統を現代的に反映したもので、寄せられた写真とメッセージは展示として公開された。こうした試みにより、地域の物語がこの公共アートの一部として自然に織り込まれている。

彫刻、水、公共空間での体験、そしてコミュニティの物語が交差する《The Fountain》は、ブレントクロス・タウンの新たな象徴であり、変化し続ける街の個性を語る存在となりつつある。

NEON

アート、建築、デザインの領域を横断して活動する英国拠点のアーティスティック・スタジオ。建築家マーク・ニクソンとビジュアルアーティストのヴィリーナ・コイヴィストによって率いられ、感覚、空間、環境への意識を通じて日常の体験を豊かにするプロジェクトを手がけている。世界各地のユニークな場所に対し、その土地固有の魅力を引き出す作品を制作してきた。手法や外観はプロジェクトごとに大きく変化するものの、常に “公共にとって意味のある体験” を生み出すことを中心に据えている。