森美術館のミッションを再訪し、過去・現在・未来の時間軸を往来する

2023年に開館20周年を迎える森美術館では、節目の年にふさわしい記念展の開催が予定されている。2023年4月19日(水)から9月24日(日)に開催される「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」と、2023年10月18日(水)から2024年3月31日(日)に開催される「私たちのエコロジー」のふたつの企画展を通して、「現代性と国際性を追求しながら、複雑かつ多様な世界との出会いの場となる」という森美術館のミッションを再訪し、過去・現在・未来という時間軸を往来する。

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「ワールド・クラスルーム展」ヤン・ヘギュ 展示風景:「ヘギュ・ヤン:コーン・オブ・コンサーン」マニラ現代美術デザイン美術館2020年 撮影:アット・マキュランガン

ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会

現代アートが世界各地の複数の観点から考えられるようになった1990 年代以降、現代アートはもはや学校の授業で考える図画工作や美術といった枠組みを遙かに越え、むしろ国語・算数・理科・社会など、あらゆる科目に通底する総合的な領域と捉えるべきものとなっている。

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宮島達男《Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01》 2018 年, 発光ダイオード、電子回路、電線、スチール、ステンレス、変圧器、LED「TimeHundred」タイプ(赤)100 プレート, 251.7×251.7×15 cm, 所蔵:森美術館(東京),Courtesy: Lisson Gallery, 撮影:表 恒匡

森美術館開館20 周年を記念する「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」は、学校で習う教科を現代アートの入口とし、見たことのない、知らなかった世界に多様な観点から出会う試み 。展覧会のセクションは「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」などに分かれているが、実際それぞれの作品は複数の科目や領域に通じている。また、企画展としては初めて、出展作  品の半数以上を森美術館のコレクションが占める一方、本展のための新作も披露され、50 組を超えるアーティストによる学びの場、「世界の教室」が創出される。

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ワン・チンソン(王慶松)《フォロー・ミー》 2003年, Cプリント, 60×150 cm, 所蔵:森美術館(東京)

私たちのエコロジー

産業革命以降人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われている。環境危機は喫緊の問題であり、現在、国際的なアートシーンにおいても重要なテーマとして多くの展覧会が開催されている。今日の環境危機を引き起こした人間中心主義を脱し、私たち人間と他のすべての存在との新たな関係性を構築する、持続可能な未来の可能性は残されているのだろうか。本展では「エコロジー」を調和や循環  として広く捉え、人間同士のコミュニティ、人間をも含む生態系、人間が認知できない世界の在り様も包含する新しい「循環」の在り方について考える。タイトルの「私たちのエコロジー」は、私たちとは誰か、地球環境が誰のものなのか、という問いも投げかけている。

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アグネス・ディーンズ《小麦畑̶対立:バッテリー・パーク埋立地(マンハッタン、ダウンタウン)―小麦畑に立つアグネス・ディーンズとともに》1982年, Courtesy: Leslie Tonkonow Artworks + Projects(ニューヨーク), 撮影:John McGrail

展示では、歴史的な作品から本展のための新作まで多様な作品を紹介する。例えば、地球温暖化と経  済格差への抗議として、アグネス・ディーンズが資本主義を象徴するニューヨークのマンハッタンに小麦  畑を出現させた1982年の作品は、今日の世界を見つめ直す機会を提供してくれる。また、高度経済成長の裏で環境汚染が問題となった1950~70 年代の日本で制作・発表されたアートを再検証し、現在の環境問題を日本という立ち位置からも見つめ直す。さらに、森美術館をひとつの環境と捉え、可能な限り輸送を減らし、資源を再生利用するなど、エコロジカルな展覧会制作を試みる。

本展は、現代アートとアーティストたちがどのように環境問題に関わってきたか、関わることができるのかを考察しながら、地球全体の持続可能な未来の残された可能性を探求しようとするもの。

森美術館開館20 周年記念展 開催概要

会期ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会2023 年4 月19 日( 水)- 9 月24 日( 日)
私たちのエコロジー2023 年10 月18 日( 水)- 2024 年3月31 日( 日)
会場森美術館( 六本木ヒルズ森タワー53 階)