ニューヨークの郊外にあるMagazzino Italian Art: パート2

私の知人は、先ほどの ‘ Dia: Beacon ‘の近くに住んでいるのですが、ニューヨーク市内から郊外引っ越した彼女は「水辺が多いので自分のヨットに乗ることが増えて嬉しい」と話していました。郊外は中心部とはまた一味違った特別な楽しみ方がありそうで素敵ですね。

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とりあえず、まだバスの時間に余裕があるので、近隣を探検することにしました。駅から数分離れた道の様子はこんな風景です。鮮やかなビンテージカーが走り抜けます。

この車、気になって後で調べてみたのですが、”1952 Oldsmobile 98” という車種のようです。ザ・50年代アメリカンスタイル。この「オールズモビル」というブランドは、1897年に発祥、2000年代初頭まで続いていたそうです。残念ながら写真には写っていませんが、ボンネットには鳥やロケットのような形をした、銀色のカーマスコットが付いています。カーマスコットというのは、車の先端についた立体的な飾りのことです(昔のベンツやジャガーの先端部分を想像するとわかりやすいかも)。車輪は、52年のオールズモビルでは標準装飾品の「ホワイトリボンタイヤ」と呼ばれる白いタイヤのようです。

それにしても、昔の車の型って曲線ラインが柔らかくて美しいですよね。

たまに博物館などでも昔の車が展示されていますが、今回のように外で走っている姿を見ると、室内で見るよりも、車らしくていいなあと改めて思います。自然の中では、木々が窓ガラスに映り込んでいたり、自然光が反射して太陽でキラキラしていて、街で見るのとはまた違った印象で美しいです。どんなデザインでも、楽しく使われている時が、一番輝く瞬間なのかもしれませんね。

数年前の映画ですと、『フォードvsフェラーリ (2019) 』や『グリーンブック (2018) 』でも昔の車が出てきました。『グリーンブック』に始終登場する車の色も明るい緑色でしたよね(映画の内容も良かったので、おうち時間におすすめです)。

ちなみに、映画『フォードvsフェラーリ』に出てくるフォード本社のあるミシガン州には、実際に”Henry Ford Museum of American Innovation(通称フォードミュージアム)”という名の車の博物館があります。車好きの方は、ぜひチェックしてみてください。かなり広く、車以外に機関車や飛行機、 バスなども展示されています。世界に1台しかないような車も沢山あり、見所満載です。車には全く詳しくない私でも十分楽しめました。時間に余裕を持って見学することをお勧めします。

さて、話を Cold Spring 散策へ戻しましょう。駅からさらに離れ、先ほどの道を進むと、森の入り口に、道が。実はちょっとしたハイキングコースがあるのです。この頃も秋だったので、落ち葉もちらほら足下に広がっています。時間はまだまだあるので、森を探検することにしました。

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鮮やかな茶色のキノコを発見。

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ドイツに住んでいた頃は、これによく似たキノコをたまにスーパーで買っていました。お腹が空いてきます。

こちらは赤いキノコです。

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半分に割れているせいか、Carsten Höller の巨大キノコの作品を思い出します。

枯れ葉が密集している大きな枝が落ちていました。影の形がかっこいい。

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最近、私はミノムシにも興味があるので、つい写真をみてミノムシの事を思い出してしまいました。山の中を楽しく散策していると、突然開けた風景が。写真中央に邸宅が見えます。眺めが良さそう。

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実はここ、 Russel Wright (ラッセル・ライト ・1904-1976) という工業デザイナーの 住んでいた邸宅です。 建築家David Leavitt (デビッド・レビット・1918-2013)  が設計を手掛けました。

彼は、近代建築の三大巨匠と呼ばれるFrank Lloyd Wrightフランク・ロイド・ライト)の弟子、Antonin Raymond (アントニン・レーモンド)の元で働いていたこともありました。

日本建築の影響を大きく受けた、 Russel Wright やDavid Leavitt の影響からか、レビット建築の細部にも日本的な影響もあるそうです。この日は残念ながら内部の公開はされていませんでしたが、いつかまた訪れてみたいです。

以前、シカゴ郊外にある、Frank Lloyd Wright の家にも行ってみたことがあるのですが、天井が低くて、なぜか日本の建物を思い出すような雰囲気でほっとしたのを覚えています。

さて、この家の、元家主であるRussel Wright はアメリカ的モダニズム確立にも大きな影響を与えた工業デザイナーの1人です。テーブルウェア(ポットやお皿など)が最も有名だと思います。

代表作はシンプルで淡いパステルカラーの食器のシリーズ’AMERICAN MODERN’と呼ばれるシリーズ。1926年の世界恐慌以降のアメリカは、ヨーロッパ流のクラシカルな食器が主流でした。そんな中、彼は「正式なディナーウェアと、ピクニックの紙皿の中間のような」というコンセプトを掲げ、この’AMERICAN MODERN’シリーズを発表します。セット販売が主流の時代に単品の販売、収納性や耐久性を重視した素材や形など、人々の生活習慣に気を配り、ライフスタイルをデザインしました。

今では単品販売や、収納に優れたカップやお皿はどこにでもあり、私たちは当たり前のように感じていますが、まさにこれを最初に考えたデザイナーの1人でもあるんですね。

この代表作シリーズは機能性を持ったシンプルな食器ながら、曲線の柔らかさや少し控えめのカラフルな色合いが優しい印象です。現在でも販売されていて、購入することができます。見かけたらぜひ手にとってみてください。

それにしても、こんな自然が豊かな場所に住んでいたんですね!作品の工業的な雰囲気からか、都会の現代的な建築物に住んでいるという、勝手なイメージがありましたが、まさかこんな森の中に住んでいたとは…良い意味で意外でした。ちなみに家であり、製作スタジオであるこのスペース、日本のデザインが影響していたそうです。室内には月を見るための場所などもあるそうです。素敵ですね(同じく、月の名所として知られる京都の桂離宮を思い出してしまいました。もしかすると、そういった美的感覚も日本の影響があったのかもしれませんね)。

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