現代美術家 束芋(たばいも) × フランス ヌーヴォーシルクのパフォーミングアーティスト ヨルグ・ミュラー(Jorg Muller) 国際共同製作による舞台作品
富山市民文化事業団が日本の現代美術家 束芋(たばいも)とフランスを拠点とするヌーヴォーシルクのパフォーミングアーティスト ヨルグ・ミュラー(Jorg Muller)との国際共同製作による新作舞台「もつれる水滴」が全国4劇場で上演されることを発表した。異色のふたりが2年間にわたってクリエイションを重ねた国際共同製作作品が、間もなく世界初演を迎える。
「もつれる水滴」はコロナ禍での長期にわたる遠隔クリエイション、2021年9月フランスでのクリエイション、同年12月の富山での滞在制作を終え、いよいよ2022年4月には最終リハーサルを経て世界初演を迎える。富山オーバード・ホール、東京芸術劇場、山口情報芸術センター、那覇文化芸術劇場なはーとによる4館連携公演となる本作は、さらにフランスでのツアーも予定され、そのクリエイションの要となる稽古場が地方都市・富山に置かれることは異例のこと。富山から国内ツアーを経て世界の劇場へ、舞台芸術の地平を展望する画期的なプロジェクトともいえる。束芋は2011年第54回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出されるなど、社会に潜む不条理を炙り出すアニメーション映像が国内外で高く評価され、近年は舞台作品にも意欲的に取り組み振付家・ダンサーの森下真樹とのコラボレーションによる「錆からでた実」2016年改訂バージョンはアニメーションにとどまらず、演出も手掛けている。
一方、ヨルグはフランス発祥のヌーヴォーシルク(現代サーカス)と呼ばれるジャグリング、ダンス、演劇、音楽、美術など多彩な要素が織り込まれた新ジャンルのトップランナー。ドイツ出身であるが、フランスを中心に活動し、テクノロジーと身体とオブジェがクロスオーバーするサーカスアートを探究し続けている。ヨルグの身体と浮遊する金属パイプが交錯しながら宙を舞い、透きとおった音を奏でる「モビール」(1995年)、さらにチェリストとのコラボレーションでバッハの音楽が天上に立ち上っていくような繊細な表現を見せた代表作「サラバンド」(2016年)は、従来のサーカスの概念を軽やかに超えるアートとして話題を集めた。
ヌーヴォーシルク(現代サーカス)について
フランスで発祥した新しい芸術表現で従来のサーカス(例えば綱渡りや玉乗りなど)とは異なり、ジャグリング・ダンス・演劇・音楽・美術など多彩な要素が織り込まれたパフォーマンスのこと。世界を席巻したシルク・ド・ソレイユもこの現代サーカスの系譜に連なる。フィリップ・ドゥフクレはじめ、ヌーヴォーシルクの異端児カミーユ・ボワテルなど、近年日本でもヌーヴォーシルク・アーティストたちの舞台はますます注目を集めている。
束芋/Tabaimo (現代美術家)
1999年キリン・コンテンポラリー・アワード最優秀作品アワード受賞。以後2001年第1回横浜トリエンナーレを皮切りに2011年には第54回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出される等、数々の国際展に出品。近年は舞台でのコラボレーションも展開。2020年、束芋が構成・演出を手がけたパフォーマンス作品・映像芝居「錆からでた実」のアメリカツアーを開催。
ヨルグ・ミュラー/Jorg Muller(サーカスアーティスト)
1994年CNAC(国立サーカス学校)卒業。1995年に制作した「モビール(Mobile)」は25年前から毎年何度も上演。パフォーマーとして約30年のキャリアを持ち、ヨーロッパのパフォーミング・アートの分野でユニークな存在となり、批評家や専門家からは、現代サーカスの主要人物の一人として認められている。