AIが紡ぐ“現代の悟り”と幸福への道
オーストラリア・メルボルンを拠点とするアート&テクノロジースタジオENESSによる「Modern Guru and the Path to Artificial Happiness」が、2024年FRAME Exhibition of the Yearを受賞した。本展はAI技術を駆使したインタラクティブなインフレータブル作品と深い物語性を融合させた先鋭的な展示である。
「Modern Guru and the Path to Artificial Happiness」はAI時代における幸福や知恵、スピリチュアリティについて考察しながら、観覧者に“もう一つの現代の悟り”を体感させる。中心となるキャラクター「Modern Guru」は訪問者が写真を撮影する動きを感知し、AIが生成する“智慧”を伝える存在だ。展示は各地の文化や会場に合わせて再構成され、技術的・芸術的な限界に挑みつつ、物語も進化し続けている。
世界中の文化と共鳴する「進化する展示」
初回開催地のフランス・Centre d'art à Châteaugironで小規模なインスタレーションとしてデビューした本展は、台湾で1000平方メートルに拡大。その後、タイではAIゲームやナレーション、対話型キャラクターが追加され、展示の内容が大きく進化した。さらに、現在展示中のフランス・ロワール渓谷に位置する「シャトー・ロワイヤル・ド・ブロワ」では、AIの環境への影響が作品に新たに組み込まれ、現代の問題意識が反映されている。
特徴的なキャラクターと体験型アート
本展の象徴的なキャラクター「Modern Guru」は4つの大きなデジタルアイを持つ半透明の楕円体で、LEDのリング上に浮かぶ。観覧者が写真を撮るとAIが新たな“智慧”を生成し、メッセージを届ける仕組みとなっており、そのメッセージには「誰もが見過ごしたものを讃えよ」といった、AIが導く未来の知恵への問いが込められている。
その他の主要キャラクターと展示
フォレストダンサー
直径6メートルのLED装飾のスカートを持つ10メートルのキャラクター。幾何学的な構造と空気圧によってバランスを保ち、観覧者の動きに反応して音を奏でる。
サンゴッド
50のインフレータブルからなる巨大な階段の先に存在する神。来場者が彼に向かって階段を上るインタラクティブ体験が提供される。
ウェイワードフォレスト
枯れた木々が並ぶ不気味な森は、AI時代における自然や人間の未来について問題提起する。
サステナビリティと技術的挑戦
本展は持続可能性にも配慮し、硬質な材料を最小限に抑えインフレータブル素材を活用。展示に使用される布地はリサイクルされ、プラスチック素材として再利用される。 NESS創設者であるニムロッド・ワイスは 「インフレータブルを絵画や木炭のように一つの媒体と捉え、その限界を探求している」と語り、空気圧とエンジニアリング技術を駆使した独自のアプローチを示している。
ENESS
ENESSは1997年に設立されたアート&テクノロジースタジオで、インタラクティブな公共アートの制作を手掛ける。彫刻や音楽、ストーリーテリングを通じて世代を超えた繋がりや驚き、喜びを提供し、日常の中に「予想外の美しさ」を生み出すことを使命としている。