東京藝術大学大学美術館にて「再演―指示とその手順」展を開催
現代の新たなメディアともいえる指示書(インストラクション)をテーマに、美術館というミュージアムにおける芸術作品の再演(再現)について考察する「再演―指示とその手順」展が、東京藝術大学大学美術館にて開催される。開催期間は、2021年8月31日(火)から9月26日(日)までとなっている。
本展示会は、指示書に従い、複製や再現、移行や再制作が必要となる芸術作品の再演(再展示)について、その保存、継承における作品の同一性を問うことを目的としている。作品の展示を主体とせず、展示時の作者不在を想定した第三者に伝えるための指示書、記録写真、映像、参考資料など、作品に関連する様々な指示や手順、仕様を公開している。
構成と主な展示作品
第1章 創造のために
日本絵画における下図や模本、粉本、また彫刻の原型や建築模型、漆塗りや蒔絵の制作手順を表した手板は、創造のための指示であり、再現手順の見本として存在する。また、創造のための指示としてだけでなく、歴史や社会背景、文化形成など包括的な総体としての「もの」を手本としたからこそ、新たな表現の源泉となり、多様な創造が生み出されてきた。
- 《手板(塗工程-本堅地見本)》
- 須藤茂雄《手板(色粉蒔絵工程-箔絵見本)》
- 《牡丹蒔絵手板》
- 《石山縁起絵巻 一の巻》
- 山田鬼斎《楠公小型銅像木型》1899
- 川原慶賀(推定)《長崎出島館内之図》19世紀
- 加藤康司《倭蘭領東印度南方合戦外伝》2020/2021
- 中井川正道《場の転換から空間意識への展開》1984
第2章 再演のための指示
展覧会のたびに設置される空間展示(インスタレーション)や、常に外部からのエネルギーや物質の流入出(代謝)を伴う「生きた」バイオメディア・アートは、展示という再演(再現)を繰り返すための指示書を必要とする。しかし、再演された作品は以前の展示と同一であるといえるのだろうか。再演のための指示書と展示記録から、作品の同一性について考えを巡らせる。
- 岩崎秀雄《Culturing <Paper>cut》2018-2020(製作-継代維持-修復-再製作含む)および《aPrayer》2016/2020(本展示は指示書)
- BCL / Georg Tremmel + Matthias Tremmel《Resist/Refuse》2017(本展示は指示書)
- 切江志龍+石田翔太《Soui-Renn -A Figure of Impression-》2019(本展示は指示書)
- 齋藤帆奈《食べられた色 / Eaten Colors-》2020(本展示は指示書)
- 室井悠輔《自由の錬金術》2014(本展示は参考資料)
第3章 再制作とその継承
コンピューター、ソフトウェアなどの機器や科学技術に依存し、制作当初からデジタルデータで制作・記録されたボーンデジタルの作品を再演(再現)する際には、模倣(エミュレーション)や移行(マイグレーション)などの手続きが必要である。また、鑑賞者が参加し、体験することで成立するインタラクティヴな作品は、常に一回性をもつ再制作が繰り返される。そのとき、オリジナルと再演(再制作)に同一性はあるのだろうか。
- ウォルフガング・ミュンヒ+古川聖《Bubbles》2000/2021
- フランソワ・バシェ《勝原フォーン》1970(本展示は指示書および参考資料、部材の一部)
- 坂田ゆかり《ない者の場/ない場の地図(日本語版)》2019(本展示は2019年1月に行われたワークショップの成果を再現)
- 川俣正《自画像》1979(本展示は卒業制作展時に設置された状態を初めて再現)
第X章 ミュージアムの仕様
会場にて公開