工芸的感性を通して現代美術を再考する展覧会

趣都金澤による展覧会「身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」が、イタリア・ヴェネチアのパラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナで2026年5月9日から11月22日まで開催される。本展はヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の開催時期にあわせて実施され、日本人アーティスト10名による約100点の作品を紹介する。キュレーションはGO FOR KOGEI アーティスティックディレクターの秋元雄史が手がけ、空間設計は建築家クラパット・ヤントラサストが担当する。

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コムロタカヒロ 展示風景 撮影:池田紀幸

本展は情報と消費が加速度的に循環する現代社会において、「つくること」に宿る身体的知覚や時間感覚に光を当てる試みとして企画された。陶芸、ガラス、漆、刺繍、木彫、繊維など、多様な素材を用いる作家たちの実践を通して、工芸的感性や身体と物質の関係性を再考する。会場となる歴史的建築パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナでは、約500㎡におよぶ2フロア空間に作品を展開。鑑賞者はスロープや高低差のある動線を歩きながら、素材や身体性、時間の蓄積を空間的に体験する構成となっている。

工芸的アプローチによる現代美術への批評

本展が提示する「工芸的態度」は、単なるジャンル横断ではなく、近代以降の現代美術が重視してきた「形式の革新」「作家の自律性」「即時的な可視性」といった価値観への批評として位置付けられている。秋元雄史は、「作品を完成されたオブジェクトではなく、身体と物質の関係が生成し続けるプロセスとして捉え直す」と語り、速度や効率を前提とする現代社会に対し、蓄積や身体的関与に基づく新たな芸術の可能性を提示する。

出展アーティスト

沖潤子

刺繍という反復的な手仕事を通して、布に生活の時間と身体の記憶を縫い込むアーティスト。家庭的労働や身体感覚を可視化する作品で知られる。

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沖 潤子 展示風景 撮影:池田紀幸

川井雄仁

陶を欲望や虚構、アイデンティティの揺らぎを投影する媒体として扱い、過剰な色彩と量感を伴う彫刻的作品を制作する。

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川井雄仁《ハワイに行ったことがない》2025年 陶器 撮影:池田紀幸

桑田卓郎

陶芸における「欠点」や「失敗」を積極的に取り込み、器と彫刻の境界を横断する表現を展開する陶芸家。

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桑田卓郎 展示風景 撮影:池田紀幸

コムロタカヒロ

ソフビ玩具やSF、アメリカンコミックスなどの視覚文化を背景に、木彫と量産フィギュアを横断する独自の彫刻作品を制作する。

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コムロタカヒロ 展示風景 撮影:池田紀幸

シゲ・フジシロ

ガラスビーズと安全ピンを用いた膨大な手作業によって、消費社会や日常風景を幻想的に再構築する。

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シゲ・フジシロ《Garbage / Under the sea》2023年 ガラスビーズ、安全ピン、ワイヤ撮影:池田紀幸

舘鼻則孝

日本の伝統的装飾文化を現代的に再解釈し、「装うこと」と身体、儀礼性の関係を探求する。

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舘鼻則孝 展示風景 撮影:池田紀幸

中田真裕

蒟醤をはじめとする伝統的な漆技法を基盤に、時間や記憶の蓄積を表現する現代漆芸作家。

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中田真裕左《サウンドスケープ》2024年 漆 右《ミラージュ》2026年 漆 撮影:池田紀幸

三嶋りつ惠

ムラーノ島の職人との協働により、無色透明のガラスを用いた光の彫刻作品を制作。

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撮影:池田紀幸
三嶋りつ惠 展示風景

牟田陽日

九谷焼の色絵技法を用い、日本文化における女性像や自然観を再解釈する陶芸家。

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牟田陽日 《The pot of pulses》2026年 陶器 撮影:池田紀幸

綿結

糸を撚り、染め、織る工程を通じて、重力や身体感覚を内包した大規模な繊維彫刻を制作する。

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綿 結 《プラトニックダンサー》2026年 綿、土 撮影:池田紀幸

「身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」開催概要

会期2026年5月9日から11月22日まで
会場パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナ(イタリア・ヴェネチア)
URLhttps://tinyurl.com/d2hm9r9j