2023年建築マスタープライズ コンセプチュアル・アーキテクチャー部門受賞作品
建築事務所スタジオRE + Nが設計したアイスランド火山博物館は、アイスランドで最も壮大な地域のひとつであるミヴァトンの壮大さを称えた自然の驚異を表現し、周辺の景観にもシームレスに溶け込むように設計されている。そのユニークなデザインは大地から現れる傾斜屋根を特徴としている一方で、敷地への影響を最小限に抑えている。この革新的なアプローチが評価され、アイスランド火山博物館は、2023年の建築マスタープライズでコンセプチュアル・アーキテクチャー部門を受賞した。
建築のインスピレーション
博物館の円形構造は火山の噴火口、温泉、湖など、地域に存在する自然の要素からインスピレーションを得ている。細長い楕円形は、フヴェルフィヤル溶岩原とディムボルギル溶岩原に計画的に沿って設計されている。また、二重傾斜の楕円のボリュームは屋内と屋外を融合させる流動的な空間を演出。そして、これらの斜面の交差点は段々畑のようなパフォーマンス・デッキを形成し、風景を見下ろす高台を作り上げている。ミュージアム内では展示スペースとオフィススペースがリフレクティング・プールを囲むように連続し、まさに、この空間にミヴァトン文化の象徴が表現されている。
探索の小道
博物館の円形レイアウトの中の3つ通路が訪問者を誘う。エントランスにはスロープがあり、来館者を俗世間から隔てる。内部のギャラリーはこの瞬間から始まり、瞑想のための静謐な道と作品やインスタレーションの豊かな探索を促す。2つ目の通路は屋外にある歩行可能な屋根で、展望台として機能している。この見晴らしの良い場所からはフヴェルフィヨール、ディンムボルギル溶岩原、そしてミヴァトン地域の素晴らしい眺望が望め、高揚感とパノラマ体験を可能とする。3つ目の通路は屋外公園のループ・トレイルであり、ダイナミックな景観の中で大規模な彫刻やサイト・スペシフィック・コミッションを楽しむことができる野外博物館となっている。
ファサードと素材
美術館のファサードは反復的で視覚的に透過性があり、周囲の風景に溶け込むよう設計されている。様々な方向を向いたファサードには、日照を最大限に確保するため最適な向きに変化するルーバーを配置。このデザイン要素はアイスランドの古典建築に見られる直線的なパターンを参考にしている。美術館の建築に使用されている素材は、直接的、元素的に時代を超えた風景との対話を喚起し、多目的展示ホールに展示されている芸術作品の完璧な背景となっている。アイスランド火山博物館は、ミヴァトンのユニークな景観を尊重し、来館者にアイスランドの自然と文化について総合的かつ没入的な体験を提供している。
スタジオRE+N
建築家の張玉亭、張普、造園家の曹志敏によって共同設立されたスタジオRE+Nは、上海、麗水、ニューヨークに事務所を構える学際的で受賞歴のある事務所。場所の本質を理解することに力を注ぎ、空間再定義へのユーザー参加を提唱している。建築マスタープライズ、A'デザイン・アワード、ミューズ・デザイン・アワードなどを受賞。最近のプロジェクトに、DesignTO Festival 2024の展示に選ばれたBeing Heardがある。