紙で作るパビリオン "Origami Teahouse"
この記事では私が学部二年生から三年生にかけて制作したパビリオンのデザインから展示までのプロセスを紹介する。
このパビリオンは「Origami Teahouse」という名前の通り、折り紙のように折った紙で構成された茶室である。マテリアルスタディから始まり、パラメトリックデザイン、デジタルファブリケーションの手法を使って製作されたのが特徴で、最終的には2023年に行われたG7広島サミットのWelcome Reception の会場にて展示する機会をいただいた。
1. コンセプトデザイン
この茶室のデザインは、国際ワークショップ"TEA Summer School Workshop"にて我々のチームが提案したものである。TEA Summer School Workshopは私が所属する広島工業大学を始めとした複数の日本国内の大学と、英ラフバラー大学が毎年合同で行うワークショップで、本茶室デザインは2022年に開催された際にコンペで最優秀をいただき、フルスケールで実現する運びになった。
ワークショップの課題は移動式の茶室をデザインするという内容だった。実際に広島に所在する上田流和風堂を見学させていただいた上で、茶室の建築的に重要な空間は、待合と茶室(ゲストの前でお茶をたてる空間)の二つであると分析した。
待合では武士も刀を外し、すべての階級の人が高さ約70cmほどしかない躙り口を頭を下げて通ることで、茶室内では社会的階級がフラットになる。このような、客が体験する待合と茶室内の意味的・空間的な変遷を我々の提案のコンセプトに取り込むことにした。
素材に関しては移動式である必要を考慮し、軽量である紙をメインとして、合板の柱で建てることを提案した。しかし後に述べるが、フルスケールでの製作の際は紙のみで自立させることになった。また、紙は折り紙のように折り目をつけ一続きのスクリーンにすることで、平らに折り畳んで簡単に運ぶことができるようにした。
また、この一続きのスクリーンは一端からもう一端にかけて高さと折り目の角度を変化させ、茶室と待合の変遷を表現した。スクリーンはS字に曲げて配置し、待合と茶室の空間を仕切る。二つの空間を分断する部分に、伝統的な躙り口と同じ寸法の開口をあけ、入り口とした。
2. 制作
2.1 マテリアル
ワークショップでは構造体として合板の柱を使うことを提案していたが、制作フェーズでは紙のスクリーンのみで自立できるように、紙自体の強度を上げる検討を行った。これは運搬をより容易にするためである。
様々な検討を行った結果、デンプン糊によって障子紙を貼り合わせる方法をとることになった。モックアップを作成し、自立できる高さを検証したり、糊付けされた紙のテクスチャーを確かめた。糊が乾くことで紙が収縮し、表面に独特の皺が生まれる。この皺ができることは予想していなかったが、マテリアルの検討から行ったからこその、思わぬ産物だった。
2.2 設計
パラメトリックデザイン(Grasshopper)を用いることで、高さと折り目の角度が変化するデザインを正確にモデリングした。また、次のファブリケーションの章にも続くが、Grasshopperでモデリングしたデータから、CNC加工機の操作コードを生成するワークフローも構築した。これによってCNC加工機にオリジナルの糊用ノズルを取り付け、糊づけ作業を自動化する事ができた。
パビリオンに使う紙は、幅910mmのロール状の障子紙を選定したため、Grasshopperではこの紙の既定の幅にすべて収まるようにプログラムを組む必要があった。素材の制約や、デザイン上の条件を満たすようにコードを組み上げるは大変だったが、いい経験になった。
Grasshopper上では、
- 展示会場でのパビリオンの配置
- スクリーンを構成する紙の枚数
- 折の角度
- スクリーンの高さ
のパラメータを調整し、デザインをフィックスさせた後、ファブリケーション段階に移る。
2.3 ファブリケーション
紙にデンプン糊を塗布するのは、とても労力がかかる作業であるのがわかっていたため、CNC加工機を使うことで自動化させることを検討した。CNC加工機のビット部分を取り外し、代わりに自作の糊用ノズルを取り付ける。紙をセットし、Grasshopperから出力したGコードの通りにCNCが動いている間、ノズルから重力で糊が滴下されるシステムを構築できた。
CNCによる自動化の利点は、単純に労力を省くことだけではなく、制作の際の正確性にもつながる。紙の折り目になる部分には糊を滴下しないようにコントロールすることで、正確な折りの位置がわかるようにしたり、ノズルにペンを簡易的に取り付けプロッターのように使うことで、切り出すべき紙のシルエットをマーキングするなども行った。
3. 展示
パビリオンの制作を行った2023年、広島でG7サミットが行われた。大学の働きかけで運よくそのWelcome Receptionの会場に展示させていただくことになった。
パビリオンの全体を構成する紙のスクリーンは、すべて折り畳んでフラットにした状態でも二人で運べるくらいの重さであったので、搬入は容易であった。むしろ土台として使った合板のほうが運搬に苦労した。
展示の際は万が一パビリオンが転倒しないように、プラスティックの板を自立したスクリーンの下からスタンドのように入れ込むことになったが、会場への搬入の時間を除けば、立ち上げる作業は10分ほどで完了した。移動式の茶室として、デザインがしっかりと機能したと思う。
また展示中は、上田宗篁さんと大学の茶道部に協力を仰ぎ、様々な国の大使や、政治家の方々に茶室内で実際にお茶とお菓子を振舞っていただいた。パビリオンサイズといえども、コンセプト、設計、制作、展示まで全てのフェーズに関わることができ、最後には実際に空間を使っていただ。学部生の時点でここまできたのは非常に貴重な経験だった。
プロジェクトビデオはこちら
Credit
Concept Design Phase
Direction: Matyas Gutai, So Sugita
Design: Yarden Alloun, Candis Boateng, Futa Oba, Kota Okugawa, Kuldip Rohit
Construction / Exhibition Phase
Direction: So Sugita
Design: Futa Oba, Kota Okugawa
Fabrication and Assembly: Sota Ayukawa, Kota Mori, Sora Munetoshi, Ryuhei Ochi
Adviser: Soko Ueda

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