活力溢れるコンパクトシティーを支える公共図書館

那須塩原市図書館 みるるは、東京から北に150Kmほど離れた栃木県那須塩原市の図書館を中心とした2020年9月1日(火)にオープンした複合交流施設。設計デザインは建築事務所UAoが手がけた。那須塩原市の地域アイデンティティでもある「森」に足を踏み入れると、季節や天気、動植物たちによる僅かな機微といった刻々の変化を感じ、その移ろいをマルチモーダルに受け止め、心を動かされる。

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All images courtesy of UAo

この図書館では、館内に点在する言葉の彫刻(アフォリズム)や展示物、活動や人々によって起こる多様な移ろいを緩やかな境界に表出させ、その機微の重なりの中を森の中のように自由に歩き回ることで、共感覚を生み出し、新しい気づきや学びにつながることが企図されている。図書館全体の構成としては、1階を市民の日常に近い沢山の機微が交わる賑わいの空間とし、2階を心地良い没入の書架空間と構成となっている。具体的には「森のポケット」「放射状本棚」「リーフライン」の下記の3つの構成が行なわれている。 

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森のポケット 

森のポケットは木立の中にパッと空が抜けて光が注ぐポケットのような吹抜けの空間。ここには明確な用途を与えず、市民活動や展示など様々な使われ方を促し、その気配は通りや吹抜けを通して館内で感じ取れるようになっている。 

放射状本棚

館全体は放射状の本棚によって構成されている。1階は、空間を緩やかに分ける格子状の間仕切りが、木立の間から見通すように視線が抜けて活動が重なり合い、移ろいをひとつながりの風景として作り出している。2階では、放射状本棚を図書分類の円グラフに置き換え、直線的な検索性を確保しながら、分類された書架を横断する散策空間となっている。

リーフライン

館全体を覆う”リーフライン”は木立の樹冠の下端を模したルーバーの天井。多面体の高低は緩やかに区切られた大小の空間を作り出している。ルーバーを通して1階まで降り注ぐ木漏れ日は多様な光の環境を生み出す。図書館の周囲に広がる街、そして図書館に集まる人々の学びや気づきや活動が作り出す日々の出来事を刻々と移ろう風景として様々な境界に取り入れて、緩やかに包み込む”森”のようなひとつながりの空間となっている。

公共図書館は、単に人が集まるサードプレイスとしての役割を終え、そこで生まれる市民の豊かな学びや交流が広域の人々へと連鎖し、社会関係資本として循環し、街全体の発展に寄与するという新しい役割が求められている。那須塩原市図書館での個々の気づきや学びは、そのひとつひとつが ”言葉の森” で生まれた活力の資源となって街に還元され、次第に街に波及し、新たな気づきが持続する。そうして、やがて大きな変化が期待されるような公共図書館の形となっている。 

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