56階からのメキシコシティのパノラマとオリジナルのアート壁画、緑に囲まれた空間で堪能するアジア料理
ロンドンが発祥の人気点心レストラン「HAKKASAN」のラウンジブランドとして誕生した「Ling Ling」は、マラケシュやオスロなど世界各地に展開され、アジア料理に新たな発見と驚きを提供してきた。このたび、メキシコシティの目抜き通りパセオデラレフォルマで最も存在感のある超高層ビルのひとつに「Ling Ling」の新しいレストランがオープンした。ビルの最上階に位置するレストランは、街一番の眺望を提供し、昼夜を問わず客を楽しませる魅力的な空間となっている。
レストランのインテリアデザインは、メキシコ建築の特徴のひとつである豪華な中庭とテラスを造るところから始まった。このコンセプトの最も難しいところは、地上56階にいながらにして、中庭の雰囲気をどのように演出するかだった。建築とインテリアデザインの境界を曖昧にする構造的な要素やデザイン手法が取られ、ポーチコ(柱で支えられた拡張ポーチ)風の3階分の高さの空間が、豊かな緑で埋め尽くされた。
全ての空間が、それぞれの質感と個性を発揮しながら、生い茂る緑と外から降り注ぐ光によって色付けされている。結果として、それぞれの空間が、素晴らしい眺望とまたとない体験を楽しむ欲求を満たしてくれている。
プロジェクトの核となるのは、超高層ビルの56階にいるとは思えないような、緑で囲まれたテラスである。3階分の吹き抜け天井と、角の立地が270°の街のパノラマを提供し、訪れる人々を驚かせる。
奥のサロンとダイニングルームへ続く天井は、高度な木材の切断技術を用いたアーチ型となっており、柔らかな照明に包まれた空間には、目的に応じたファーニチャーが並べられている。
アトリウムの端には、「Table Tres 60」と名付けられたセミプライベートのダイニングテーブルが設置されている。10名までが座れるこのテーブルの目の前には180℃の眺望が広がり、角に設置されているため、まるで浮いているかのような錯覚に陥る。「街に浮くテーブル」は、メキシコシティで最も予約の取りにくいテーブルになるだろう。
アトリウムを見渡すのは、メキシコ人アーティストのパオラ・デルフィンによる「自然の守護神」と題した絵画である。美と花、そして愛の女神、ゾチトルにインスパイアされた、等身大より大きな絵は、両文化を象徴する植物、蓮の葉とリュウゼツランをあしらうことで、アジア文化とメキシコ文化の融合と多様性の重要性も強調している。「自然の守護神」は、街の喧騒から逃れた小さなオアシスをここに造り、心地よい食事の時間を提供する。
メインロビーで客を迎えるのは、ブランドロゴをあしらった木造のスクリーン。どんなアイデアも受け入れるレストランのオープンな姿勢により、建築にブランドイメージを組み込んだ新たなロゴの活用が生まれたのである。
Sordo Madalenoについて
Sordo Madalenoは、メキシコシティを拠点に、3代にわたり、80年間活動しているデザイン事務所。100名を超える専門家を擁し、その事業内容は、建築、都市計画、インテリアデザインなど多岐にわたる。各プロジェクトで、文化的側面を尊重し、限界に挑戦し続けてきた。都市を取り巻く環境、背景、社会的影響、そして実行可能性を吟味しながら、総合的な建築ソリューションを提示する。受賞歴のある建築プロジェクトから大規模な都市デザインプロジェクトまで、すべてのプロジェクトでユーザーのクオリティオブライフ向上を目指している。