デザインスタジオ エフィセンシーラボによるボックスキャニオンの壮大な景観に存在を委ねた「ガラスの家」

エフィセンシーラボ・フォー・アーキテクチャー PLLC (以下エフィセンシーラボ)は、建築家、プランナー、デザイナー、教育者のチームで構成されており、構築環境の効率をより深く理解することに取り組んでいる。コロラド州テルライドボックスキャニオンの絶壁に囲まれた3.4エーカーの敷地に建設された邸宅は、アスペンの木と垂直な岩崖、小川が下を流れる雄大なブライダルフォールズに隣接するロケーションに、床面積約7,000平方フィートの3つのカスケードガラスボックスで構成された。

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Photo credit: Josh Johnson

「すべての建築家はガラスの家を建てることを夢見ている、ということわざがありますが、このプロジェクトは私たち建築家の感覚を高め、自然環境に多大な関心と感謝をもって、熟考するようしむけてくれた空間構造です。」と語るのはエフィセンシーラボ社長のAybars Asci。

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Photo credit: Josh Johnson

単純な複雑さ

ガラスの家を建設したい、というクライアントのオファーを受け、Asciは、景観と建築環境との境界を曖昧にするオープンプランのビジョンを提示した。3つの片持ちガラスボックスの建築表現に焦点を当て、45フィート×45フィートの各ガラスボックスは吊り下げられたところに配置し、周囲の山や崖からそびえ立つアスペンの垂直地形へと水平方向アプローチをする計画だ。「ほんの数週間で息を呑むようなものを作るというアイデアを思いつきましたが、ビジョンを実現するために何年にもわたる慎重な改良が必要でした。概念は非常に単純でしたが、その単純さを達成するためプロジェクト自体の道のりは複雑になることを再認識させられました。」とAybars Asciは説明する。山腹の急な地形は、落石と雪崩という二重の危険条件を緩和することから始まり、これが設計において主要な部分を果たした。上り坂側に雪崩と土石流バリアを建設する必要があったが、山腹に固定されたアンカーを含む恒久的な土壌保持システムを導入することで、家の水平なプラットフォームが確保された。

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Photo credit: Josh Johnson

微妙なバランスの実現

3つのカスケードパビリオンは片持ち梁式で、後方で積み重ねられる。それらの複合鋼と木材の床フレームには、擁壁の固定を強化するガラスボックスの構造的な軽さが加わっている。露出した自然摂理を備えた分割の大理石レンガで外部擁壁を仕上げるなど、自然の仕上げをふんだんに利用することで、構築環境と自然環境の融合がさらに進む。「カンチレバーが、家と雄大な山の間に繊細なつながりを作り出す、一種の共生関係を作っています。擁壁は斜面に合流して山と一体化し、空間に吊るされたパビリオンは明るさの対位法を生み出しています。」とAsciは言う。

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Photo credit: Josh Johnson

パノラマ吸収

ガラスパビリオンの内部は、息を呑むような景色を遮る障害物を取り除くために、杉の平らな天井面に埋め込み式の照明が設計された。大きく開いた床板と、最小限の3/4インチ幅のマリオンで区切られた窓パネルのおかげで、アスペンの木だけが垂直方向のコントラストとなり、水平方向の景色が途切れることなく広がる。標高9,000フィートを超えると生じる断熱窓パネルの大気圧差の問題は、断熱ガラスユニットに毛細管を挿入することで緩和された。

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Photo credit: Josh Johnson

3レベルのガラスの家のデザインレイアウトは、居住区間を分離して構成している。ガラスの家への入り口は石造りのパビリオンとガレージ、続いてゲスト用ベッドルーム、そしてゲームルームに隣接して配置された1階から中層階に上がると、オープンキッチン、景色を遮るもののない広々としたリビングルーム、隣接のダイニングルームなどグラスハウスのオープンな共用スペースが広がる。そして家族の居住区間として3ベッドルームが上層階に分離されている。

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Photo credit: Josh Johnson

ガラスの家の上2つの階には、内部の磨かれたコンクリートの床がガラスの壁を越えてシームレスに広がり、片持ち梁のパビリオンのカスケード設計のおかげで、広々とした外部のデッキスペースになっている。中間階の外部経路は、造園家と一緒に設計された円筒形の木製浴槽に通じている。

夢を生きる

完成したプロジェクトは、住む人を自然に帰す。冬には手すりや屋上の雪の線が、張り出した崖に縞模様になって溶け込む。月明かりに照らされた峡谷の山々に囲まれ、星に囲まれたガラスの家に住むというコンセプトは、夢を実現させた世界だ。

最初にこの土地を訪れたときから、このプロジェクトは私が建築家として知りえたすべての知識と感情を使うことになる、とわかっていた。私はこの地に着手する責任を感じ、またそれは人間の精神が提供できる最高のものを作り出す責任を伴うことだった。- Aybars Asci

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Photo credit: Josh Johnson

エフィセンシーラボ・フォー・アーキテクチャー PLLCについて

「効率の良さは美しい」は、より持続可能で、包括的で、公平な未来を構築するためのエフィセンシーラボの研究主導の設計哲学の背後にある精神。アルゴリズムツールの使用や建物のパフォーマンスモデリングなど、概念の明確さと分析プロセスを組み合わせて、すべての新しい課題において、構築環境の効率向上へと道を開くことをめざしている。自然に刻まれた建築言語を開発するために、同社の専任の設計専門家チームは、マスタープランニング、実現可能性調査、建築設計、インテリアデザイン、家具設計、製品設計、効率コンサルティング、ビルディングインフォメーション、モデリング(BIM)及びデータの視覚化など、幅広いサービスを提供している。