メキシコの建築デザイン事務所VERTEBRALが、自給自足の自然菜園と教育センターを建設
コミュニティーガーデンと教育センターを新設したプロジェクト「El Terreno」は、コロナ禍の2020年2月に建設が開始され、同年4月に完成。建築デザイン事務所のVertebralによって、メキシコシティの丘に建設された当プロジェクトは、ミネラルを多く含んだ豊かな土壌や石が、草花や野菜が育つ魅力的な環境を提供。都会の中の庭園を実現している。
当プロジェクトの目的は、コミュニティの教育において、社会的な刺激との繋がりを持ちつつ環境に関する学びも得られる場を作ることであった。更に、食物循環やサステナビリティを肌で感じられる環境でもあることも求められた。
Vertebralは、過去の建設で利用したリサイクル素材を活用して、ユニークなパビリオン(あずまや)を作った。100%リサイクル可能な建物を作ることは、当プロジェクトのために編み出された新しいプロセスを経て選別された独自の素材やモジュール、ユニットなどを利用することと同じくらい重要であった。
我々は、多元性と多様性を享受できるような空間をデザインしました。そのため、一般的な用途の傾向などは極力考慮せず、癒しの空間を生み出すアイデアの発掘や、ユーザーとの関わりによって意義づけされるような空間にしたいと考えました。
-Vertebral
丘の斜面に建設された多目的パビリオンは、緩やかな傾斜に沿って庭に開かれていく形。壁は、変形させた鉄の棒の囲いに、建設の際に掘り起こされた石をいっぱいに敷きつめて構築。屋根のトラスには、コンクリートの型枠だった木材を利用。わずか4つのモジュールで構成されたトラスは、地域ボランティアによって組み立てられた。
用途が限定された空間は、すぐに廃れてしまいます。その一方で、用途が不確実で曖昧なスペースほど、ユーザーの目的により柔軟に形を変えることができる多面性を備えており、活気にあふれた空間を維持することができるのです。
-Vertebral
当プロジェクトの発案者、ミシェル・カラチは、ライフラインも含めた自給自足のコミュニティに深く関わって活動している。El Terrenoは、地産の植物や野菜の販売で経済的に自立した、自給自足が可能な菜園である。教育プログラムを通して育てられた野菜や植物は、地域のカフェや店に販売されている。雨水は、パビリオンの緑化された屋根のシステムを介して確保される。そして、支柱を通って貯水され、そこから菜園に戻される仕組みだ。電力はソーラー発電で賄われ、トイレの廃物はたい肥化され、庭園の自然の肥料となる。
El Terrenoは、その時々で必要とされるニーズに常に応えられる空間を、教育、サステナビリティ、デザインの3つを集結して形作った。この革新的なモデルは、明るい未来に向けた新たな提案である。
Vertebralについて
Vertebralは、2016年、メキシコシティに設立された、建築・ランドスケープ事務所。大都市を拠点に事業を展開するうちに、都会の喧騒を逃れた自然に開けたアウトドアのスペースに魅せられるようになった。そこで、庭園のデザインを数多くこなし、都会に森をつくるようなプロジェクトを手掛けるようになる。材料は、プロジェクトを行う地域で生産されたものを利用。クラフトマンシップを重視し、プロジェクトの細部にまでゆきとどいたデザインを施す。