バザールをイメージしたデザインと空中庭園が特徴の商業施設「Tagh Behesht」がイランの都市に登場
イランの第二の都市と呼ばれるマシュハドに、RVAD Architectureスタジオによるデザインの複合施設「Tagh Behesht」が設計された。イランの都市開発に一石を投じるべく、公共スペースの在り方に新たなアイデアを提示することがこのプロジェクトの最大の目的であった。そして、この地に太古から続くバザールが、人々の日常の中心であり経済の基盤でもあることから、ビジネスセクションとパブリックスペースを兼ね備えた本プロジェクトには、バザールをイメージしたデザインが採用された。
バザールをイメージしたデザイン
バザールは、アーチ状の大きなメインエントランスから人を中に導き入れる構造が一般的。そしてそれ以外のいくつものアーチ状のポーチからも、人がバザールのメインエントランスに流れるようになっている。また、大きな空間をアーチ状の天井で区切るデザインもよく見られる。これらは、マシュハドの有名なバザールのデザインの特徴でもある。このアーチ状のデザインは、本プロジェクトの外装デザインにも多く採用されている。
空中庭園
本プロジェクトは、マシュハド最大の公園にほど近く、観光客も含め多くの人でにぎわう場所であるため、都市の新たなハブとなる可能性を大いに秘めている。このような魅力的な場所であるにも関わらず、商業スペースの多い都市の中心地であるマシュハドには公共の緑地が少ない。よって、RVAS Architectureスタジオは、マシュハドのような都市における公共スペースの在り方について新たな見通しとなるような、緑豊かな商業施設を提案した。
本プロジェクトは、市内最大の緑地であるメラットパークを見渡せる眺望と、公園への直通の歩道を構築。また1階の緑地と上階の緑地が歩道で連なるレイヤードパークと名付けられた構造も採り入れた。これは、マシュハド郊外の山村地帯の家のバルコニーに見られる、層状に連なった構造にインスパイアされている。プロジェクトに張り巡らされた歩道により、車の往来を気にせず、緑のある空間を楽しむ、そんな穏やかな体験を都市のなかでできるようになるのである。
中央の平らな緑地が、全ての歩道の合流地点となっている。プロジェクトから街に繋がる歩道もここが発着点であり、外から人を招き入れ、プロジェクト内のビジネスフロアやバザールへと導き、そしてまた人が外へと流れていく。人の循環をスムーズにする重要なプラットフォームとなっているのである。
また、オフィススペースの全ての階に設けられた中庭は、緑地空間を提供するだけでなく、充分な自然光をオフィスに導き入れる役割も担っている。メッシュ状のレンガの壁は、東西からのきつい日光を和らげ、オフィスに届く光度を調節している。オフィスに、外へ開けた美しい眺望を届けることは、今までイランのオフィスビルデザインでは考慮されてこなかったことである。
サスティナビリティ
マシュハドのような高温になる乾燥地帯では、綺麗な空気の生成に水は欠かせない。低層階に作った池は、夏場に涼しい風を循環させ、さらに美しい景観も提供している。
RVAD Architectureスタジオについて
RVAD Architecture Studioは、2020年イランのテヘランにて、2人の若い建築家Hannaneh MisaghiとHasan Dehghanpourによって創業。人と建築の関係強化にフォーカスし、その地の歴史と文化に配慮しながら、社会と住民のためになるようなデザインを提案している。未来を担う世代に必要なソリューションを提案し、各プロジェクトが社会に新たな視点をもたらすことを念頭に活動している。個人宅から商業施設、大規模な複合施設、そして都市計画まで、幅広い分野のプロジェクトを手掛けている。