海辺のプライバシーと公共性を両立する住まい

シドニーを拠点とする建築設計事務所Common Officeが、ボンダイビーチ近くに4階建て住宅「Ramsgate House」を完成させた。若い家族のために設計されたこの住まいは、現代的な海辺の暮らしに向けて古典建築の要素を再解釈したプロジェクト。ボンダイという土地との強いつながりを感じられる一方で、オーストラリア有数の観光地に隣接する環境の中で、静かでプライベートな住空間を実現することが求められた。

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Photo credit: Anson Smart

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ボンダイビーチに近接する立地条件は、本計画における最大の設計課題となった。多くの人が行き交う公共性の高い環境に位置しながら、住まいとしての落ち着きや親密さを確保するため、計画には行政との綿密な協議や設計変更が重ねられた。建物が地域の景観にどのように貢献するかも含め、慎重な調整を経て実現している。

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Photo credit: Tom Ross

設計の中心となったのは、古代からモダニズムに至るまで幅広く建築に用いられてきた「ロッジア(開廊)」の再解釈である。設計チームはローマの「イタリア文明宮(Palazzo della Civiltà Italiana)」から着想を得て、一連のレンガ造アーチを導入。これにより、公共空間である街路と私的な住空間との間に緩やかな移行領域を生み出した。

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Photo credit: Tom Ross

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建築家たちは、この住宅を「ボンダイとマイアミの中間に位置するような存在」と表現している。街路に面した外観にはアールデコを思わせる要素を取り入れながら、過度な装飾を抑えたデザインを採用。構造体として機能するレンガ造のアーチがファサードにリズムを与え、住宅と都市環境との関係をやわらかくつないでいる。

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建物には主に伝統的な二重レンガ構造を採用し、一部には三重レンガ構造も用いている。荷重を支えるアーチは視線や自然光を取り込みながら、日射を和らげ、海辺特有の気候に適応する空間的な奥行きを生み出している。また、厚みのある境界空間や深い開口部によって日射熱の侵入を抑え、室内環境の快適性を高めている。

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内部ではアーチの曲線的な造形が4層を貫く彫刻的な階段空間へと展開し、建物全体へ自然光を導く構成となっている。その動線の先には最上階の銅板仕上げのパビリオンが配置され、家族や来客が集う場所として機能するとともに、海やビーチを見渡す眺望を提供する。銅製の外装は時間とともに風合いを変え、建築の表情に変化をもたらすよう計画されている。

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Photo credit: Anson Smart

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Photo credit: Tom Ross

建物後方では、アーチのモチーフが再び現れ、スタッコ仕上げの外壁とスチール製サッシを特徴とするデザインが展開される。吹き抜けのリビング空間は庭とプールへとつながり、在来種を中心とした植栽が地域の自然環境とのつながりを強調している。

インテリアはHandelsman + Khawとの協働によって設計された。耐久性を備え、海辺の気候にも適応する落ち着いた色調の素材を用いることで、建築が持つ空間性や雰囲気をさらに引き立てている。

また、本プロジェクトでは環境性能にも配慮した。パッシブデザイン、自然換気、採光計画、在来植栽の活用を組み合わせることで、建築的な魅力と持続可能性の両立を図っている。

古典建築への参照、気候への応答性、そして土地との強い結びつきを融合したRamsgate Houseは、ボンダイという場所が持つ公共性と、家族のための私的な暮らしを同時に成立させる新しい海辺の住まいを提示している。

Common Office

インテリア、建築、都市空間、そして領域(テリトリー)への関心を基盤として設立された設計事務所。住宅から大規模な都市デザイン提案に至るまで幅広いプロジェクトを手がけてきた実績を背景に、建築設計、デザインリサーチ、そして実験的・構想的なプロジェクトに取り組んでいる。

現在は、住宅プロジェクトや集合住宅、家具コレクションのデザイン、コミュニティ施設、研究活動など多様な分野を展開している。規模や用途、条件にかかわらず、すべてのプロジェクトを等しく重要なものとして扱い、緻密な設計プロセスを重視している。組織性と明快さが、都市生活と住環境の双方に積極的に貢献する建築を実現する上で不可欠であるという考えを掲げている。