音声ガイドとともに巡る新たなハイキングのかたち
GPSと連動した熊野古道・伊勢路の公式オーディオガイド「馬越峠」と「松本峠」が、一般社団法人東紀州地域振興公社と協働しON THE TRIPよりリリースされた。本製品は地図にマッピングされたスポットをオーディオガイドを聴きながら巡ることのできるアプリで、日本語のほか英語などにも対応している。位置情報と連動して、歩いてそのスポットに訪れると自動的に音声が再生される仕組みになっており、スマホをポケットに入れたまま聴けるハイキングガイドとなっている。
目の前に広がる、馬越峠の「物語」を知る
馬越峠は、階段状ではなく畳のように滑らかに敷かれた美しい石畳道と、尾鷲ヒノキや杉の美林が特徴。
Chapter 03|石畳
馬越峠の石畳道は江戸時代の初め紀州藩により整備されたもので400年前のもの。登り口から峠までの2キロの石畳道は整備された当時のままの姿で残されています。
道幅は、偉い人を駕籠に乗せて運ぶことも考えて2.7メートルを基本としました。敷石は大きく平らで、折り重なるように敷かれています。これらの石は周辺の山や谷からの花崗岩を用いており、歩きやすいように歩幅に合わせて敷かれているためストレスなく歩くことができます。
本ガイドでは馬越峠の美しい巡礼路を歩きながら、目の前の景色が生まれた背景を想像することで、大切に繋がれてきた歴史を体感できる。
歴史の足跡に立ち止まる、松本峠
松本峠は伊勢神宮から数多くの峠を越えて熊野三山のひとつ熊野速玉大社に向かう最後の峠。また、敷かれた時代が異なる石畳を同時に味わうことができる峠道となっている。
Chapter 07|地蔵さんと茶屋跡
…峠には400年ほど前の江戸時代の初めころに建てられた身長170センチほどの地蔵さんが旅人を見守ってくれています。
ところで、この地蔵さんには穴が空いています。なぜでしょうか? これは鉄砲の穴ともいわれ、こんな言い伝えがあります。
むかしむかし、大馬新左衛門という鉄砲の名人が松本峠を越えて隣町に行った、その帰り道のこと…
まるで映画や小説のように人の心を動かす作品のようなガイド
本製品はまちの歴史、その土地が持つ物語について丹念に取材のうえに作られており、まるで映画や小説のように人の心を動かす作品のよう。訪れた場所への理解が深まり旅の体験が豊かなものとなる。制作を手がけたON THE TRIPはオーディオガイドを導入することで観光のDX化をしたい施設や自治体を募集している。この取り組みは日本の文化財の入館料は他国と比べて安く、来場者がどんな体験ができるのか十分に伝わっていないという課題が背景にある。日本の文化財には誇るべき物語があるにもかかわらずその魅力を来場者に伝えきれていない現状に、デジタルを使って応えようとしている。