美術的な構造と色彩を持つ7種のファニチャーシリーズ

PFS(Press Furniture Series)はプロダクトデザイナー・川本真也が手がける新たな家具コレクションであり、あまり意匠に用いられることのない「丸パイプの潰し加工」に焦点を当てた意欲的な試みとなる。構造材として使われる円筒形のステンレスパイプに「潰し」を加えることで、造形的な美しさと機能性を同時に備えた全く新しいデザイン言語を確立している。

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Images by Masaya Kawamoto

直線的でミニマルな構造体により、潰されたパーツのユニークな形状が際立ち、彫刻作品のような存在感を放つ。また着色には塩浴着色処理と呼ばれる特殊な技術を採用。塗料や顔料を使わず、酸化被膜によって唯一無二の模様と色味を生み出すこの工程は、メイネツ株式会社の職人たちの手仕事により一つひとつ仕上げられている。色は朧(Oboro)と霞(Kasumi)の2種類で、使用するステンレスの種類や厚み、冷却スピードなどによって表情が変化する。

さらに、本シリーズは分解・組立可能な構造を採用しており、輸送や梱包の効率も重視されている。量産を見据えたモジュール構造に、手作業で施される唯一無二の着色が重なることで、精密な機械加工と手仕事が共存する「新たな量産美」が体現されている。ラインアップは椅子、肘付き椅子、テーブル、スツール、サイドテーブル、そして2種の照明器具を含む全7点。FUJIARCHによる試作製作、メイネツによる着色処理が行われており、全作品の撮影は川本自身が手がけている。

川本 真也(かわもと まさや) プロフィール

プロダクトデザイナー / インダストリアルデザイナー。日本大学大学院芸術学研究科修了後、大手オフィス家具メーカーおよびデザイン事務所にて経験を積む。オフィス・公共施設の家具、家電、生活用品など多岐にわたるデザイン実績を持ち、2024年に独立。人と暮らしに寄り添う普遍的な製品づくりと、素材・技術・構造から新たな価値を導き出すアプローチを続けている。現在は東京を拠点に活動中。